会社の仕事 問われるコンタクト製造・販売会社の社会的責任意識 対面販売の重視

投稿No:8076

会社の仕事 メニコンハードレンズ・フォーシーズンの使用体験ハードコンタクトレンズを見直す機運

会社の仕事 社会的責任の意識

月末の支払い日に、取り引先の担当者にコンタクトレンズ製造・販売会社の社会的責任の意識を尋ねました。

会社によっては、コンタクトレンズ・ユーザーへの安全性確保と営利性確保へとの比重が異なっています。

その例として、インターネット通販会社への対応があります。

ネット通販では、眼科と提携した十分な安全性確保がなされていません。

安全性の確保は、利用者自身の自己責任となっています。

これには、コンタクトレンズの歴史的な背景があります。

1950年代から1980年代まで、我が国ではコンタクトレンズの中心はハードコンタクトレンズでした。

ハードレンズの市場リーダーは、当時のハードレンズの御三家と呼ばれたの

はメニコン、ニチコン、シードの3社でした。

特にメニコンはハードレンズからスタートして急成長を続けてきました。

最初のヒット商品は、直径8mmのハードレンズ、メニコンエイトでした。

その後もO2(オーツゥ)、O2-32、EX,スーパーEX,Zへと酸素

透過性の高いレンズの開発を続けました。

メニコンは初期の企業名は東洋コンタクトレンズでした。

シードは初期のハードレンズを販売していた時は、レンズの名前はマイコンでした。会社の名前は東京コンタクトレンズです。

ニチコンは日本コンタクトレンズですが、最近倒産して会社はなくなってしまいました。

ハードレンズの良い点は、乱視の矯正がしやすいということです。

そして、装用者自身がレンズの装用による不具合に気が付きやすいことです。

しかしハードレンズには、異物感が強いという弱点があります。

ハードレンズを使っていると、レンズの劣化やホコリが眼に入ったとき、不

具合が起きたときなどは異物感が強く出るので、自分自身で装用を中止することになります。

不具合が起きると自発的な眼科受診につながっていました。

ソフトレンズの登場

1970年代から長期間使用するソフトレンズが登場しました。

ソフトレンズの欠点は柔らかいので破れやすいことや、目の分泌物によってレンズが汚れる事とタンパク質が蓄積するので蛋白除去をしなければ白濁すること、そして殺菌消毒が必要です。

殺菌消毒の方法に熱消毒しか許可されていなかったのでケアが面倒でした。

つまり、手間がかかって汚れやすく、破れやすく、カビの予防が必要で、

一つのソフトレンズを長期間使うのは、ユーザーに負担をかけていました。

使い捨てレンズの登場

1991年から使い捨てレンズが登場して、これまでのソフトレンズのように長期的にレンズを使用しなくても二週間程度で交換とか、毎日交換するようになり、使用期間が短くなりました。

ソフトレンズの市場リーダーはボシュロムでした。

こうなると、慣れるまで異物感が続くハードレンズや、一つのレンズをケアしながら永く使うソフトレンズは、すっかり勢いを失いました。

 

今は使い捨てレンズ全盛の時代になっています。

使い捨てレンズの落とし穴

使い捨てレンズの市場リーダーはジョンソン・エンド・ジョンソンです。

これまでのハード、ソフトレンズの市場リーダーにとって代わった新たなリーダーとフォロワー達は、これまでのコンタクトレンズの医療性に対して以前の市場リーダーのような医療性に比重を置くことより、市場拡大できる商品性、営利性に比重を置くことになりました。

どこでも、簡単に、手軽に、安く自社製品を購入できる市場環境を構築することが市場拡大につながることでした。

この経営戦略は成功して、市場規模の拡大をもたらしました。

しかし、使い捨てレンズにも欠点があります。

それは、コンタクトレンズの医療性が薄れて来たことです。

以前のように購入時に眼科受診をしたり、定期検査を受けないで、自分の判断でコンタクトレンズを使用する傾向が高まりました。

医療性が薄れることで、日本全体の眼障害は多発していることが眼科医師会から警告されています。

購入方法も無店舗販売、インターネット通信販売などで簡単に買えることで、コンタクトレンズが高度管理医療機器であることすら知らない人もいます。

それに拍車を掛けたのが、サークルレンズやカラーコンタクトレンズいわゆるカラコンです。

カラコンの販売は、雑貨店でも購入出来るようになっています。

これは監督官庁の厚生労働省が目指した管理体制ではありません。

厚生労働省ではカラコンをインターネットで購入することに注意を促しています。

簡単便利な購入方法は全て自己責任です。

レンズの箱に添付している取り扱い注意書を読んで、注意を守って使わなければ、眼障害が起きた時の責任は、自己責任が負わされているのです。

コンタクトレンズの隠れたリスク

ここまでコンタクトレンズの医療性が薄れてくると、改めてハードレンズの見直し機運が起きています。

メニコン、シード、サンコンタクトレンズの三社が共同して、ハードコンタクトレンズを見直すセミナーを開催することになりました。

ハードコンタクトレンズの調整には、一定以上の技術と経験が必要です。

このフィッティング技術を持っている眼科は、過去に比べて減少しています。

ハードレンズのテストレンズを用意している眼科も少なくなっています。

使い捨てレンズになると、規格決定に大した技術がいらなくなりました。

まるでTシャツを選ぶように、M寸を中心としたS・M・Lくらいにデータが集約され、単純化されました。

ハードレンズの膨大な規格に比べると、使い捨てレンズの規格は実にシンプルです。

使い捨てレンズを長期間自己流で使っていたり、注意書きに背くような使い方をしていると、将来的に角膜内皮細胞が減少するというリスクがあります。

しかし、このことはあまり知られていません。

この隠れたリスクをコンタクト製造・販売会社はもっと積極的にディスクローズしていく社会的責任があります。

眼科の先生方はハードレンズの良さをもう一度見直そうと、三社共催セミナーを開くことになったようです。

レンズメーカー各社の対応

ボシュロムの嶋岡邦寿さんにコンタクトレンズの販売方法について、お話を聞きました。

ボシュロムは使い捨てレンズが医療性を離れて雑貨品のように扱われることに対し危機感を抱いています。

ボシュロムの基本方針は、コンタクトレンズは高度管理医療機器であることを再認識して、眼科を中心とした流通ルートを重視しようとする考えです。

このためには、販売方法には対面販売を重視しています。

対面販売の対極にあるのが、通信販売です。

通信販売では、不都合があれば眼科専門医に相談して下さいと、注意書きに書いていますが、どこに行けば良いのか、どんな時が不都合なのかは、装用者自身が判断することが求められています。

ジョンソン・エンド・ジョンソンの菅野伸宏さんから、アキュビュー製品の流通について、変革がありそうだと聞きました。

詳しい話はまだ案内出来ないそうですが、業界の中では何が検討されているのかはすでに知られています。

ジョンソン・エンド・ジョンソンは自らがインターネット通販であるオンラインストアーを開設して、眼科医会の反発を招く結果になっています。

コンタクトレンズの医療性と営利性の狭間にあって、ジョンソン・エンド・ジョンソンの販売政策には迷いがあるようです。

メニコンの山本覚さん、溝上竜一さんとは社員研修の打ち合わせをしました。

メニコンは、コンタクトレンズ業界の中では、得意先への研修を重要視しています。

販売店のスタッフが、コンタクトレンズの専門知識を習得するだけでなく、接遇マナーや、接客マナーまでも研修範囲に入れています。

昨年から、メニコンと何回も研修を続けているので研修の効果も、少しずつ上がってきています。

研修効果が現れるのは、顧客のリピートと、紹介が増えるという結果に表れてきます。

価格を下げて、安さでお客様の関心を買うという戦術もありますが、これは長続きしません。

安くすればするほど、自分自身の首をしめてサービスの低下につながる結果

になるからです。

まとめ

お客様は「安くて美味しい」サービスを期待しています。

製造・販売会社にとって、顧客の期待する「安く」することは市場での価格競争を促進することです。

「美味しい」とは、医療性を重視して安全性を確保することです。

しかし、安さと安全性の両立は、国の防衛と同じようになかなか、両立できません。

防衛上の安全性の確保には、近代的な防衛システムと、それをこなす優秀な自衛隊の隊員と、膨大な防衛予算が必要です。

さらに、大切なことは国の防衛にあたるという理念が必要です。

置き替えると、コンタクトレンズが高度管理医療機器であるということを、ユーザーに認識ししてもらって、安全にコンタクトレンズを使用できるよう、安全性の面からサポートしていくことが大切です。

コンタクト製造・販売会社の社会的責任意識が問われているのは、コンタクトレンズの医療性と商品性の矛盾する二面性に対して、自社はどちらにどの位比重を置くかが問われることになっています。

その経営判断の結果がレンズ装用者の眼障害に影響を及ぼすことにつながります。

1月が終わり、まもなく2月がきます。

コンタクトレンズ会社は、次の需要期の3月4月を視野にいれて、3月はその準備期間と考えています。

2019年1月30日(水)