鳩間島 ヤシガニ生態調査 民宿「ポッポ」を追い出される 鳩間島訪問記(2)
沖縄県八重山地区 自然環境調査旅行記)(8)鳩間島
民宿「ポッポ」に入り、冷たいお茶をいただいてしばしホッとしていた時のことです。
民宿「ポッポ」の親父さんは、スキンヘッドで、たくましい、個性がぷんぷん溢れる、バイタリティの溢れた感じの人でした。
その親父さんが突然、私たちに対してすごい剣幕で怒り始めました。
最初は何が原因なのか、何を怒られているのか、分かりませんでした。
私に向かっては「おまえは誰に紹介してもらってきたのか」という事でしたので、私は「蕎麦田さんに紹介をさ
れました」という話をしましたら、「蕎麦田を呼べ」ということになりました。
一方、店の予約ノートをひっぱりだして「蕎麦田は誰だ。どこにいるんだ」ということで電話を探していました。
そして私が携帯電話で連絡をとろうとしている時に、研究会のメンバーと一緒に蕎麦田さんがやってきました。
蕎麦田さんが事情を説明しました。何を興奮して怒っているのかが最初は分かりませんでした。
まず第1番目に、「分宿がいかん」という話でした。
1つのグループが2つの宿に分かれて泊まるのは気にいらんということでした。
うちのルールでは、よその宿と分かれて泊まるなんてことは許されない、よその宿からあぶれた客をもらうなん
てわしは許さんのや、という主義主張をどなりちらしていました。
私たちは、予約のときにそんな主義主張は聞いていなかったので、はるばる鳩間島に着いたその時にルールを言
われても困惑しています。
興奮してどなりつけている中で、もう一つ理由がなんとなく伝わってきたのは、どうやらヤシガニ研究会のこと
が気に入らないようでした。
つまり、ポッポの店はヤシガニを体験ツアーで捕って、そして料理にすることを売り物にしています。
お店の看板にもそのように書いています。
なのに私たちはヤシガニを保護するための生態調査をするわけですから、商売を邪魔するように見えたのかもしれません。
はっきりしないまま出て行けと言われました。他所にいけと言われるわけです。
「他所はいっぱいだ」と頼んでも、話を聞いてもらってもポッポの親父さんの怒りはおさまりません。
「おれは商売でやっているのではないんだから出て行け」ということです。
いくら頼んでも怒りは収まりそうもないので諦めて、「じゃあもう出て行こう」ということになりました。
これまで宿に泊まった中で、こんな自分勝手な意見を言う主人は初めてです。
炎天下の下で、客にホスピタリティを示すどころか、どれだけこの先このお客さんは困るだろうと分かっていな
がら、追い出すのです。
これでは鳩間島の印象は一変してしまいまいた。
なんて了見の狭い人なんだろうと思いながら、私たちの言い分も聞いてくれないまま、荷物を再び持って、次の宿を探しに出かけました。
この後、この鳩間島民宿「ポッポ」の前を何度か行き来しました。
「ポッポ」の親父さんの姿は、狭い島なので、何度も出くわすことがありました。
若い女性達を案内しているときの姿を見て、驚きました。まるで別人です。
本当に優しそうな、いかにも島のお父さんとでも言われそうな一面を見てしまいました。
いったいどちらが本当の姿なのでしょうか。
一方では今来た客を追い出し、他方ではニコニコ愛嬌溢れる愛想のあるもてなし、さて、真実はどちらでしょうか。
さて、宿を追い出された私たちは、とりあえず蕎麦田さんの泊まっている加治工(カジク)さんのお店に行ってみました。
でも加治工さんの宿も、もう既にいっぱいなので、私たちはどうなることやら風前の灯火でした。
ひょっとすると石垣島に今日の便で帰ることになるのかなぁと心中ドキドキでした。
加治工さんの奥さんが、あちこちの民宿に電話してくれて、「マイトウゼ」という民宿が泊めてくれることになりました。
やれやれやっと泊まる所が見つかりました。
加治工さんと奥さんはいい人です。これでやっと鳩間島の人が、好きになれそうです。
観光客が増えても、お昼に食事をいただく場所はこの島にはありません。
だからどの民宿も3食付になっています。
気の毒に思った加治工さんの奥さんの気配りで、私たちは宿泊客ではないのですが、お昼を作ってくださいました。
名物の八重山ソバをいただきました。
オリオンビールの生樽が置いてあり、伝票に自分でサインをすれば自由におかわりができるようになっています
。これは良いと思い、さっそくおソバと一緒に生ビールをいただきました。
治工さんの食堂の窓からは、青い海と緑の木と芝生が見えます。
そしてその向こうには遠く西表の島影がうっすらと浮かんでいます。
なんと絵になる風景でしょうか。
こんな風景の中でいただくオリオンビールはもうすっかり先ほどの「出て行け事件」を忘れさせてくれます。
扇風機の風に吹かれながら、おいしい八重山ソバと生ビールをいただきました。
まとめ
島の人口はわずかに50人。
それが最近の民放テレビ局のドラマの舞台になったことにより、急に観光客が増え、島の考えが大きく変わったようです。
つまり、需要が急に増えて、宿のオーナーの立場がとても強くなり、「嫌ならよそに行け」といった暴言すら出るようになったのです。
一方、本来は顧客であるはずの泊まる人は、宿のオーナーの顔色を伺いながら泊めてもらう、哀れな立場に転落してしまっています。
2005年7月5日(火)