顧客満足と従業員満足を生んだQC(品質管理)活動 カニ料理 西村屋 三宮
カニ料理の西村屋三宮店で女子従業員の送別会
退職社員への慰労会
3年間、我社の社業の発展に特に尽くしてくれた女子従業員の中滝さんが、
退職することになりました。
そこで今夜は、社長とマネージャーが中滝さんに対して、
退職の送別会をしました。
中滝さんはこれまで会社に多大な貢献をしてくれたので、
その感謝の気持ちで慰労会を行いました。
カニ料理の西村屋三宮店
場所は三宮のカニ料理の西村屋「和味旬彩」です。
お店の中に入ると重厚な感じのする和風の造りになっています。
今夜の予約した部屋は、
エレベーターに乗って2階の部屋に通されました。
部屋に入るとお座敷の掘りごたつのテーブルに、
3人分の席が用意されています。
お酒を飲むと顔が紅くなるので今夜はお酒を飲む前に
記念写真をお店の方に頼んで撮りました。
西村屋はカニ料理の専門店なので、
出てくるコースはカニづくしです。
カニの味噌をスティック状のおかきの上につけていただきます。
次にビールで乾杯です。
ビールの突き出しにはオードブルとして
前菜がお皿に盛られて出てきます。
少しずつ、お部屋の暖房があったまってくると
上着を脱いでくつろいだ気分で、
ビールを飲む体勢に変わっていきます。
ビールが飲みやすいように、
出てきたお皿はカニの刺身です。
小さなお椀に別にもっているのは、
松葉蟹のはらみのさしみです。
3人分のカニ鍋の材料が運ばれてきました。
これを土鍋に少しずつ入れていきます。
中滝さんが気をきかせて色々と鍋の進行係をしてくれています。
豆腐を思うような形に切て鍋に入れ
ぐつぐつ煮立ってくればもう、鍋の始まりです。
中滝さんは嬉しいのか食べる前に
もうかなり頬が紅潮しています。
松葉博雄が話題を作っていきます。
中滝さんに質問です。
男の人の値打ちは何ですか、と尋ねると
中滝さんは、「男の人は良く働くこととやさしいことです」
このようにすっぱりとした男の値打ちが示されました。
そこでさらに質問です。
「それではギャンブルをする人はどうですか」と尋ねると、
「いやですね」ということでした。
パチンコ、麻雀、競馬、競輪などは
勝った時は大きな気持ちになりますが、
結局のところ全員が勝ち続けるわけでもなく、長期的にみれば、
よくてトントンで、普通は負け越しているものです。
それを隠しているのが普通ではないでしょうか。
予期せぬ収穫
それは、西村屋でカニ鍋をいただいている時に、
給仕のお世話をしていただいた
仲居さんからの話でした。名前は和田さんでした。
この従業員の方に何か特別のエネルギー
のようなものを感じたので話しかけてみました。
そうすると、この従業員の女性の方は
人的サービスの研究に通ずるような、
大変素晴らしいお話しを聞かせていただきました。
少し話の中身をお話しすると、
この方は西村屋三宮店の開店(1972年)以来
ずっと勤務しているとのことでした。
西村屋の社長さんは、お店をオープンした当時は
QC活動を従業員に対して行っていました。
QCサークル(キューシーサークル)とは
同じ職場内で品質管理活動を自発的に小グループで行う活動です。
全社的品質管理活動の一環として自己啓発、相互啓発を行い、
QC手法を活用して職場の管理、
改善を継続的に全員参加で行うものです。
次の3つを基本理念として掲げています。
- 人間の能力を発揮し、無限の可能性を引き出すこと。
- 人間性を尊重して、生きがいのある明るい職場をつくること。
- 企業の体質改善・発展に寄与すること。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
現場でのサービス向上運動
従業員の皆さんは最初は何をしていいのかわからず、
言われるままに意見をまとめ、グループごとに発表しあって、
顧客サービスの為に勉強会を続けていたそうです。
その中で、みんなの前で発表するのがはずかしいからと言って
お店を辞めていく人もいたそうです。
お客様が喜んでくれる事が現実に起きてくると
和田さんには仕事がおもしろくなりました。
和田さんの話を聞いていると、
かなりサービス精神が高いと思います。
お店のお客様の中には、
幼い子供を連れてきてご夫婦でカニをいただいていた方が、
何年か経ってくると、その幼い子が、
高校生になって和田さんよりも
背が高くなるところまでお客様との関係が
長続きしている例もある様です。
そんな人がたくさんいるのです。
気に入ったお客様は週に一回来るほどの
ヘビーユーザーになっています。QC活動の成果です。
お客様が忘れ物をする事を防ぐにはどうしたらいいか。
という議論もしたそうです。
また、呼び鈴の位置も議論になりました。
上座に座る方は一般的に偉い人なのに、
その上座に呼び鈴があるのは
主賓の方に宴席の用事をさせるようなものになるので、
呼び鈴の位置を下座に替えるとか、
多くの改善案がQC活動の結果出ました。
長期勤務ができた理由は?
さらに質問を続けます。
「27年勤められた理由はなんですか」
と尋ねたところ、以下のお話が聞けました。
あのねーわたし気を負わなかったですよね。
長く勤めようと思っていなかった。
わたしは長く勤めなくてよかったんです。
誰かのお相伴で一緒に勤めてくれたら、
1ヶ月慣れたらそれでいいって、
私に長く勤める気はないし、
子供は小学生だし、それで「はいはい」って、
気楽に勤めたんですよ。
それがなぜか、お相伴のその人が先にやめちゃってね。
それで皆に辞めないでって言われちゃって、
別に長く勤めようとは思わなかったですよね。
その日その日の一日を大事に
その日その日の一日を大事にしていくうちに、
いつのまにか日が経っちゃったって感じですかね。
だから、長く勤めようとか、そういう気もなかったんですよ。
夜更かししないでね、身体に気をつけて、
それと一緒に働いている人と喧嘩しない、
いじめないということを気をつけましたね。
人に自分からいじわるしたりしないね。
知らないで傷つけている場合はしょうがないけど。
喧嘩しないように、もめないように、
皆が仲良くしていけるように、
影でね、あの人が、あなたのことを褒めていたよと、
そういう様に言ってあげて、
お互いが喧嘩しないようにして、
身体気をつけて、病気しないようにそれだけです。
それで長く続いたと思うんですよ。
わたしも色んなめに合ったけど、まあね、子供に
「お母さん、人からいじめられたから辞めますわ」
って言えないわと思ってね、子供の手前ね。
啓発を受けた徳川家康
それで頑張りましてね。そういう時は徳川家康を読むんです。
1巻から16巻までずーっと読むんですね。
1巻から毎日毎日読んで、徳川家康も苦労してますからね。
合計3回読みましたかね。徳川家康の本を読んでると、
そのうち、自分の苦労はいつの間にか解決しますからね。
学生が読んだらいいと思いますよ。
なんせ戦国時代からずっと入ってますから。
桶狭間の戦いだとか、なんでもかんでも。
あの時代の武将が全部出ますでしょ。
今川義元から武田信玄からみんな出ますでしょ。
それだから戦国時代が全部ですから、これはいいなと思って。
1人1人がセールスマン
西村屋の社長さんがね、言うことには、
1人1人がセールスマンだ。
このように 27年前、社長さんがお話になって、
日本の初期のQC活動が
値打ちであったんですよ、
と和田さんが話してくれました。
とってもいいお話をお聞きして、
まだまだサービスの研究は奥が深い、と改めて思いました。
従業員満足
和田さんが今夜の食事会が送別会であることを知って、中滝さんに、
「あんたね、3年くらいで辞めたらだめよ、こんなに社長がわざわざ
送別会をしてくれるのは、どこの会社でもあるわけではないのだからね、
そのことをよく分かっていないとバチがあたりますよ」
このような話しの後、今夜の食事会は終わりました。
鍋を食べると身体がホカホカしてお酒を飲むと顔が紅くなります。
茹でカニの紅さに負けていません。
1階の店の入口のあたりには池のような生簀があり、
生きたカニが手足を伸ばしています。
外に出るとすっかり街は夜となり、
行き交う人もまた、紅い顔をした人が多くいました。
中滝さん、お疲れさまでした。
我が社の良さに気がついたら、また戻ってきてください。