邦楽・新内鶴賀流11代目家元/鶴賀若狭掾師匠の「天覧演奏会」
「邦楽の友」2005年11月号24ページに、『それは一言の「言葉の種」から芽が出て実がなった』と書き出された、鶴賀若狭掾師匠の『「天覧演奏会」後記』が掲載されました。
鶴賀若狭掾師匠が2005年9月10日紀尾井小ホール「鶴賀若狭掾リサイタル」に天皇・皇后両陛下がお出ましになられました。
その後、鶴賀若狭掾師匠が邦楽界で初の歴史に残る個人の天覧演奏会であったことが大変な評判となりました。
前回の鶴賀若狭掾師匠が来店されたときの掲載記事では、天皇・皇后両陛下のお写真はありませんでした。
その後、「邦楽の友」11月号に掲載されたことにより、畏れ多くも天皇・皇后両陛下の当日のお出ましのお写真の提供がありました。
鶴賀若狭掾師匠から提供いただきました当日の天覧演奏会の様子が、写真を通して伝わってくるように思います。
その昔、西行法師は「心無き身にも哀れは知られけり、鴫立つ沢の秋の夕暮れ」と詠みました。
もののあはれの理解できていない松葉博雄でさえも、天皇・皇后両陛下のご臨席の感動は、今が、その時のように伝わってきます。
邦楽の持つ日本情緒、三味線の音、鶴賀若狭掾師匠の語るような、泣くような、訴えるような声色は、情を交え、聞く者の心に響き渡る語り口です。
演目は、「若木仇名草」(蘭蝶)―お宮口説き―と、一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)―組み打ち―でした。
きっと、天覧演奏会の全ての人に、どうにもならない人の世の人情と、源氏と平家の栄枯盛衰の理をしみじみと訴えたことと思います。
鶴賀若狭掾師匠の気持ちは純粋です。
『「言葉の種」が蒔かれ、蒔いた種が芽を出し実った。そして「新しい種」が蒔かれた。天皇皇后両陛下お手植えの種である。育つも枯れるも我々(邦楽界)次第。
大事に大きく立派に強く育てなければ申し訳ない。一期一会の大いなる意義を実感した演奏会であった』と鶴賀若狭掾師匠は結んでいます。