沖縄・名護。イオン名護店にある回転寿司店
「まぐろ問屋 やざえもん」。
奥さんと何気なく立ち寄ったこの店で、
思いがけず、忘れられない出会いがありました。
回転寿司で始まった、偶然の会話

席に着くと、私たちの左右に分かれて
大人数のグループが座られました。
寿司の注文方法や、
沖縄ならではの無料サービス「魚汁」の取り方など、
自然と会話が生まれます。

私はてっきり
「沖縄の方か、米軍関係のご家族かな」
と思い込んでいました。
ところが――。
「どこから来られたんですか?」
何気なく尋ねた一言が、空気を一変させます。
「スウェーデンから来ています」

思わず聞き返しました。
スウェーデン? 沖縄に?
さらに話を伺うと、
一緒に来られている6名の方は、全員ご家族。
国境を軽々と越えた、
スケールの大きな「家族の形」でした。

元・外務省職員、鈴木忠さん
お名前は 鈴木忠(すずき・ただし)さん。
現在は退職されていますが、

かつては外務省職員として世界を舞台に働かれていました。
淡路島の話題を出すと、
鈴木さんから思いがけない一言が返ってきます。
「淡路島といえば、原健三郎衆議院議長ですね」
驚きました。
鈴木さんは、外務省から衆議院へ出向し、
原健三郎衆議院議長のもとで働かれていた方だったのです。
ケニア、スウェーデン、そして沖縄へ
鈴木さんの赴任地は、
外交の最前線を経験された後、
定年退職後の移住先として選んだのが
社会福祉が充実し、暮らしやすいスウェーデンでした。
今回の沖縄旅行は、
三世代・7人の家族旅行。
奥様は今回は同行されていません。
三つの国籍が混ざる、インターナショナル家族

さらに驚いたのは、お孫さんたち。
日本・スウェーデン・ケニア
――三つの国籍が家族の中で交わっているそうです。
実は、私の右隣に座っていた
体格の良い男性を、
「米軍関係の方かな」と勘違いしていました。
ご家族紹介を受けて、
すべてが一本の線でつながりました。

「ホームページに載せてもいいですか?」
記念に写真をお願いすると、
皆さん快く、笑顔で応じてくださいました。
私と年代の近い鈴木さん。
その生き方は、
「こんな人生の選択肢もあるのか」と
強い刺激を与えてくれました。
回転寿司にも、人生にも「作法」がある

鈴木さんは、
回転寿司に慣れていない娘さんやお孫さんに、
流れている寿司より
注文して握ってもらう方が新鮮なこと
を丁寧に教えておられました。
寿司を前にした家族の姿が、
どこかとても印象的でした。
本マグロの解体ショーを
ぜひ見せたかったそうですが、
この日は残念ながら開催なし。

「今回が、日本最後の里帰りかもしれません」

そう語る鈴木さんの表情に、
少しだけ寂しさがにじみました。
外交官として、
きっと数え切れないほどの
国と国、人と人をつないできた方。
もっと話を聞きたかった――
正直、密着取材番組のように
「付いて行ってもいいですか?」
と聞きたくなるほどでした。
偶然の出会いが、旅を物語に変える
このあと私は、
ヤンバルへドライブに向かいました。
でも、沖縄で一番印象に残ったのは、
名所でも景色でもなく、
回転寿司での、偶然の隣席でした。
人生色々、家族も色々。
そして――
旅の思い出も、人との出会い次第で深くなる。
そんなことを教えてもらった、
沖縄の夜でした。