蕎麦の殿様のように社長がソバ打ちを始めたら犠牲者続出
投稿No:7967
勤め人を辞めて、独立開業する選択に、蕎麦打ちがあります。独立は出来ても前途は多難です。
蕎麦打ちができたら格好良い
ある人から蕎麦打ちを趣味にするよう勧められました。
確かに美味しい蕎麦を打って客人に振る舞えば、これは美味しいといって、
皆さんからまた食べたいと所望されるのも格好良くて、良い夢です。
蕎麦打ちを見ていると、そんなに難しいようには見えず、
これなら私でも出来るのではないかと、今にも蕎麦打ちセットを注文しかけたことがあります。
蕎麦打ちは私でも出来そう
親戚の女性に蕎麦打ちの有段者がいるので、電話で相談してみると、
教えてあげるという返事でした。
毎年沖縄で年末大晦日には銅谷賢治さんのお家で蕎麦打ちをして、
年越し蕎麦を頂いています。
沖縄ではそばといえば、ソーキソバですが、銅谷賢治さんのソバは、
そば粉から作る手打ちそばです。
東大出の人工頭脳を研究するのような先生が、分野の違う蕎麦打ちをしているのを見ると、その意外性に驚いて、ますます蕎麦打ちに興味が湧いた事があります。
落語「蕎麦の殿様」
このとき思い出したのは、落語にある「蕎麦の殿様」です。
あらすじは、ある大名がよそのお屋敷に行ってご馳走を頂いた後、
招待してくれた大名の家来が作る蕎麦打ちを見て、自分もやってみたくなってたまらなくなってきました。
屋敷に帰ると、家来に命じて、
鶴の一声で「実演」に取りかかります。
山のようにそば粉を運ばせ、小さな入れ物ではダメというので、
馬の行水用のたらいを用意させ、殿さま、さっそうとたすきを十字にかけ、
はかまの股立ちを高々と取って、まるで果たし合いにでも行こうという出立ち。
「……これ、水を入れよ。……うん、これはちと柔らかい。
粉を足せ。……ありゃ、今度は固すぎる。水じゃ。あコレコレ、柔らかい。
粉じゃ。固いぞ。水。
柔らかい。粉。水、粉、水、粉、粉水水粉粉水水粉……」
というわけで、
馬だらいの中はヘドロのようなものが山盛り。
その上、殿さまが興奮して、鼻水は垂らしっぱなし。汗はダラダラ。
おまけにヨダレまで、ことごとく馬だらいの「そば」の中に練りこまれるか
ら、家来一同、あれを強制的に食わされるかと思うと、生きた心地もない。
いよいよ恐怖の試食会。
宮仕えの悲しさ、イヤと言うわけにもいかないから、
グチャグチャドロドロの奴を、脂汗を流しながら一同口に入れる。
「あー、どうじゃ、美味であろう」
「ははー、まことに結構な……」
「しからば、代わりを取らせる」
汗と唾とよだれと鼻水で調味してあるそばを、
腹いっぱい詰め込まされたものだから、
翌日は家来全員真っ青な顔で登城する。
みんな、その夜一晩中ひどい下痢でかわやへ通い詰め。
そこへまたしても殿のお召し。
「あー、コレ、一同の者がそば好きじゃによって、
本日もそばを打っておいたゆえ、遠慮なく食せ。
明日も打ってとらせる」
「殿、恐れながら申し上げます」
「なんじゃ」
「これ以上、上様のそばを下されるなら、ひと思いに切腹をお申しつけ願いまする!」
「なに食えないと? そのような不届きものは、手打ちに致す!!」
と、まぁこんなストーリーです。
このように、もし、社長が蕎麦打ちを始めれば、誰かが犠牲になります。
それは気の毒なので蕎麦打ちは思い止まり、挑戦していません。
趣味と商売とは違う蕎麦打ち
私の友人が会社勤めを辞めて、蕎麦打ち修業をして、お蕎麦の店を開業しました。
この場合は、研究熱心が功を奏して、ある程度の人気店になり、お店は繁盛しました。
しかし、思った以上に重労働だったようで、とうとう体を壊してしまいました。
お蕎麦の店は、蕎麦を打てばいいだけではないのです。
お店が流行れば、お運びさんを採用して、働いて貰う経営者の立場に変わります。
仕入れから蕎麦作り、従業員の雇用、税務申告、
お店が流行るようにマーケティング活動、天ぷらを揚げるための準備、
閉店の後の片付けなど、独立開業を夢見ていたのですが、
やってみると想像以上の重労働でした。
そして等々体をこわして、おそば屋さんは閉店です。
お店が流行って、お客様の支持が集まって、お店を長く続ける事は、
やってみれば大変な事だと思います。
一休庵でいつも買いそびれているのが、限定販売の鯖寿司です。
お昼頃居たときには、もう売り切れです。
朝一番に行くくらいのつもりで、鯖寿司を買いに行かなければ、入手困難のようです。
まとめ
蕎麦はヘルシーなので、女性の間に根強い人気があります。
食べたくなったときに来て、食べたら後片付けもしないで帰る客の立場の方が、気楽なことが分かりました。
趣味で時々蕎麦を打って、美味しいと喜んでもらう旦那芸のレベルで収まっている方が、安泰です。
蕎麦と殿様のように、腕自慢が高じて犠牲者を出さないほうが安泰です。
2018年8月23日()