花鳥風月を求めて、夏は蛍、蛍の宿は、暗い暗い、滝のそばです。

ゆっくりと失われていく昔の自然を、もう一度求めることは、零れた水を器に移すような、難しい事です。次世代の子供達に、日本の自然を残してあげたいと思います。

北淡町の轟で、今年のびわの実を買った後、そのまま西海岸を走っていくと、 あの美味しい焼きアナゴの匂いに惹きつけられて、またまた魚増に来てしまいました。

車で走って、魚増に近付くだけで、匂いで魚増だと分かるのですから、隣近所の人たちは、毎日アナゴの匂いが部屋の中まで入ってきて、食べたくなって我慢するのが堪らないことと思います。

匂いの源は、あの砂糖醤油です。砂糖醤油に何度も穴子を浸けて、焼いています。

砂糖醤油の匂いは、穴子に染みついて、炭火で焼かれると、さらに強い香りに変化していきます。

焼き肉の炭火焼きの匂いも、強い匂いですが、焼き肉の匂いと、アナゴの炭火焼きの匂いは、性格の違う匂いです。

もし、隣が焼き肉屋さんなら、毎日焼き肉の匂いが、部屋に染みこんできます。部屋に染みこんでくる匂いとして、焼き肉の方が良いか、それとも、アナゴの炭火焼きの方が良いか、どちらがいいでしょうか?

魚増の店先にも、今の盛りを迎える、びわが置かれています。なぜ魚屋さんに、びわの実があるのか尋ねてみると、魚増のお嬢さんが、北淡町のびわ農家に、嫁いだからだそうです。

アナゴを仕入れた後は、サンセットロードをドライブします。夏になると、サンセットロードの高いヤシの木の並木が、海の景色と良く似合います。

冬に北淡町を走ると、冷たい風が吹き荒れているのですが、6月の海は、これから夏が近付いてくる期待感で、何だかウキウキしてきます。

途中見つけたコメリで、庭の植木のための、園芸用品を買いました。

夕方になると風が止まり、波が静かになる夕凪になります。夕凪の頃は、港に巣くっている鳥たちは、何となく集まって、今日一日の寛ぎをしているように見えます。

奥さんに提案しているのは、近くの川を遡って、蛍狩りに行こうという提案です。

夜20時くらいになって、周りが暗くならないと、たとえ蛍が飛んでいても、蛍の灯りが見えません。

川の州がある部分には、葦の葉が青々と茂り、緩やかな風に踊るように身をくねらせて、遊んでいるようです。

真っ暗になると、足場が見えなくなるので、まだ少し残照がある間に蛍の宿を訪ね、足場がどんな状態なのかを確認しておきます。

農家の使う農薬のせいで、蛍はめっきり少なくなっています。しかし、今は残留農薬のことが、かなり気にされるようになり、工場の煤煙と同じように、残留農薬の放流も懸念されるようになりました。

もうすっかり田植えは終わり、植えたばかりの稲の苗も、少しずつ伸びてきています。

川上に上っていくと、川幅は少しずつ狭くなり、もう葦の繁る場所がなくなりました。

突然行く手でサギが飛び立ち、驚かされます。この辺りに、野鳥が棲むようになったことが分かります。

ゆっくりと、ゆっくりと、川に沿って遡っていくと、少しずつ辺りは暗くなり、何だか今にも蛍が飛び交うような、期待感が湧いてきます。

この写真は、肉眼ではもう見えないくらい、暗い状態で写した写真です。

このくらい、周りは暗くなっています。電柱に照明灯があると、その辺りは明るくなります。

本当に暗い場所は、歩いていても、どこが道なのか、どこが溝なのか、分からないくらい暗いのだという経験を、与論島で経験しました。

小さな滝があり、滝の周りには、巨大な自然林が残っている場所に、蛍の宿があります。

この状態で、蛍は見えているのですが、残念ながら、写真の中には、蛍の映像は、残っていません。

奥さんと、暗くなるまで粘って、頑張ってみたものの、期待した蛍の乱舞といえるほどの、蛍の数は見あたりません。

それでも今年の蛍は確かに見ました。そう思いながら、期待はずれだったという、奥さんの不満を宥めながら、来た道を帰ります。昔のように、少しの努力で自然を楽しめる時代ではなくなっています。

2014年6月19日(木)