淡路島の深刻な水不足 パソナ ホテル建設工事中止 淡路島の水は本土から
淡路島の水不足 パソナ ホテル建設工事中止
いま淡路島では、
「水不足」が社会的に
大きなニュースになっています。
今回に限らず、昔から繰り返し
話題になってきた歴史的な課題です。
昔から淡路島は水不足の島として
知られてきました。
最近になり観光開発や企業の進出により、
年々水の需要が増えている一方で、
供給量が追いつかない現状が
浮き彫りになりました。
特に話題になったのが、
パソナグループが
淡路島で進めていたホテルの建設計画です。
当初は大阪万博へ向けて
観光振興の目玉として期待されていましたが、
「希望する水量を供給できない」という理由から
建設が中止になったと報じられました。
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2025年1月には、パソナは淡路市岩屋地区にて、
レストランなどを併設する
複合型ホテルの建設を計画していて、
建物は5階建て、延床面積11,184㎡、
工事費は約130〜140億円とされていました。
淡路島が水を貯めにくい理由
まず第一に、川が短く急勾配という
理由があります。
淡路島の川はすべて島内で完結し、
本土のように長くて大きな河川がありません。
流域面積が小さいため雨が降っても
水は一気に流れ下り、
すぐに海へ流れ出してしまいます。
その結果、ため池や小規模ダムに頼るしかなく、
安定した水供給が難しいのです。
次に、火山性・花崗岩質の地盤が多いのも原因です。
土壌や地盤が水をため込みにくく、
地下水として蓄える力が弱いとされています。
特に花崗岩地帯は水がしみ込みやすく、
表層にとどまらないため、
地下水源としても十分ではありません。
また、平地が少ないのも関係しています。
淡路島は中央に山地が連なり、
平地は沿岸部に限られています。
湖沼や大規模な貯水池を作るスペースが少なく、
地形的に「大規模に水を貯える構造物」を
造りにくいのです。
こうした地形のため、
淡路島では古くから農業用水を確保するために
ため池が数多く作られてきました。
その数は約2万ヵ所とも言われていて、
日本でも有数の「ため池の多い地域」です。
しかし、ため池はあくまで農業用中心で、
生活用水や都市開発需要をまかなうには
限界があります。
そのため島内の水資源だけでは
需要を満たすことが難しいので、
最終的には本州から海底送水管を通じて
水を供給する仕組みが整備されました。
淡路島に送られる水は、
主に 兵庫県の加古川水系や
明石川水系 から取水されたものです。
これらは兵庫県本土の比較的大きな河川で、
上流にはダムも整備されているため
安定した水源となっています。
これは「明石海峡大橋」の建設と
並行して整備されたもので、
注)写真出典 神戸新聞 2025.8.31
本州の明石市側から海峡の下を通り、
淡路島へ水を送り届ける仕組みになっています。
さらに、送水管は複数設置されていて、
万が一1本にトラブルが発生しても、
供給が途絶えないよう冗長化された
安全な体制が整えられています。
淡路島の水道用水の大部分、
およそ 7割以上はこの送水に依存しています。
つまり、もし本州からの送水が止まれば、
島全体の暮らしが成り立たない
というほどの重要なライフラインです。
しかし、この送水管には
一度に送れる水の量(送水能力)が決まっていて、
無限に水を供給できるわけではありません。
淡路島では、近年の人口増加や
観光客の急増に加え、
ホテルや大規模商業施設の新設、
さらに農業や工業での用水需要が
重なっています。
こうした要因によって
水の需要が一気に高まると、
海底送水管の送水能力の上限を
超えてしまう可能性があるのです。
実際に今回、
パソナグループのホテル計画が中止になったのは、
「希望する水量を供給できない」という
広域水道企業団の判断によるものでした。
これは「水を送る量に限界があるため、
新たな大規模施設に回す余裕がない」
ということを意味しています。
つまり、水の問題が
開発のブレーキになった のです。
送水量が限界に近づいた場合、
まず優先されるのは住民の生活用水です。
そのため、給水制限や節水要請が行われたり、
夏場には水圧の低下が起こったり、
さらには農業用水の
制限につながる可能性もあります。
つまり「観光開発」と「住民生活」の
水需要がぶつかるとき、
最終的には生活を守るために
開発が抑制されるという構図になるのです。