インド巡礼記:パトナに到着する ポーターは重いスーツケース3個を横にして、頭に乗せて歩きます。第12話
インド巡礼記:パトナに到着する ポーターは重いスーツケース3個を横にして、頭に乗せて歩きます。第12話 【その12】
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■12月30日金曜日
朝5時の予定が30分程遅れて、
パトナ(PATNA)に着きました。
早朝なのでまだ外は暗いです。
ポーターが荷物を取りにやってきました。
ポーターは重いスーツケース3個を横にして、頭に乗せて歩きます。
歩くための安定性をよくするために、
頭の上にはなにやらターバンを工夫して巻いています。
これまで夜行列車の中で立って乗っていた現地の乗客たちは、
私たちが降りるやいなや、
私たちが座っていた席に急いでかけつけて、
早い者勝ちのように座り込んでしまいました。
駅では布をかぶって寝込んでいる人がいたり、
ホームで火をたいて話し込んでいる連中もいます。
もう、改札もなく、出入り勝手自由な状態です。
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降りるときに切符を確認することもないので、
余計なお世話ですが、
乗客が切符をちゃんと買って乗っているのかすら
心配になってしまいました。
駅の外へ出てみると、
リクシャが囲いの中にたくさん客待ちをしています。
2人分ぐらいの荷物を抱えて乗っている親子連れもいます。
客引きが声をかけてきます。
何かお恵みを欲しそうに近づいてくる者もいます。
物欲しそうな人が多いように感じました。
朝が白みかけてくると、小鳥の声も聞こえてきますが、
ポーターが運んでいるはずの我々の荷物がバスに届かないので、
動くこともできないまま、
バスの中でずっと待っています。
アーナンダ氏はどうしたのでしょうか。
彼も荷物と一緒にどこに行ったのか分かりません。
岡山から来ているカメラ好きの東山さんの4人連れは、
平気でインドの貧富の差をテーマに、
現地の人々に向けてシャッターを切るので、
フラッシュの光が容赦なく人々の姿を照らします。
そばで見ていて少し日本人的な無恥を感じます。
やめてはもらえないだろうか、
少し常識がないんじゃないだろうかと思いました。
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バスの外では、
頭から布をかぶって寒そうな男達がじっとこちらを見ています。
物乞いをしているわけではなくてただ見ているのです。じっと。
ヒマなのでしょう、今日も日長一日、
ずっと道行く人を見ているのでしょうか。
どうしてバスが発車しないのかが分かってきました。
アーナンダ氏が駅に着くと、
夜行列車の予約の部屋がお金を払ったのに
足りなかったことを抗議しているらしいのです。
ここでは大きな声を出して主張した者が勝ちです。
身なりも正式な方が尊敬されるそうです。
もちろん英語でわめく方がさらに効果が期待できるようです。
バスの周りに集まった男達は、
依然としてじっと中を見ています。
岡山の東山さんたちカメラ好き一行が降りて、
接近して一人のいい男を横から、
下から、ポーズをつけて写しています。
待っているだけでは退屈するばかりなので、
これも一つの暇つぶしということなのでしょう。
アーナンダ氏が帰ってきましたが、
気が付くと今度はバスの運転手がいません。
どこかへ行ってしまったようです。
添乗員の岡田氏が帰ってきて言うには、
「荷物をレントゲンチェックをしているので
遅くなっている」とのことです。
荷物にレントゲンを当てれば
フィルムが台無しになってしまいます。
大変なことだと心配で仕方ありません。
国内旅行なのに、
夜行列車から降りてその荷物を
レントゲンチェックなんかするのか、
不思議に思います。
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事情がはっきりと分からぬまま、
じっと待たされるのはイライラするだけで、
車内では添乗員の岡田氏を非難する声があがり始めました。
その中で、小言ばかりを言っている林さんが、
みんなに聞こえるような大きな声で言うには、
「これまでのツアーの中の添乗員の中で、この人が一番頼りない。
人柄でもっているだけだ」
とまで言っています。
なるほど、人柄だけとはうまく言いました。
時間が経つにつれて皆さんの不満はだんだんと膨らみ、
このままではおさまらなくなりました。
私もカメラのフィルムがレントゲンを浴びると台無しになるので、
このことが頭から離れなくなり、
そこで、私が皆さんの意見を調整して、
代表者3人で駅長室へ実態調査に行ってみることにしました。
税関手続き所で、
アーナンダ氏と日の出ツアー岡田氏が駅員とやりあっていて、
はっきり分からないけどアーナンダ氏が
とにかく強く抗議したので、
税関の係員がつむじを曲げてしまったのでしょうか、
取調べだか交渉だかが長引いているようです。
レントゲンの件は金属探知機だったので
フィルムへの影響はないとのことで、少々ホッとしました。
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バスから見ていると、本で読んだように、
インドの社会にカースト制が依然として残っているのか、
身なりの粗末な人は、
道の掃除とかポーター程度の仕事しかすることができないようです。
7時30分を過ぎて夜はすっかり明けて、
こんな狭いバスの中で
二時間も時間をすごしているのは無駄だと思いますが、
これがインド流なら仕方がないと思うしかありません。
真理を求める私の旅は遅々として進みません。
アーナンダ氏からは、
鉄道会社のミスを追及することが目的だと聞いていました。
日の出ツアーの岡田氏は
税関手続きだと言っていました。
この2人の言っていることは、一致していません。
私が見たアーナンダ氏と職員とのやりとりは、
お金を返せと言っているレベルではなく、
何か賄賂の要求に対して、
出す、出さないのようにすら見えました。
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アーナンダ氏は夜行列車の一部屋分をいかにも取り返すように、
2時間以上もやり合っているように見せかけているのではないかと、
この現場を見て疑惑が浮かびました。
ひょっとすると、
これは自作自演の猿芝居かなあと思いました。
結局のところ、お金は取り返せたということにはなりませんでした。
やはり、誰かの懐にそっと入って、
どこかで一杯やる費用に当てられるのでしょうか。
嘘か真か、疑惑は消えません。
人の行う様々な行動には、表と裏があり、
表のように見せながら、
実は裏を隠しているのでしょうか。
ますます、人間の持つ物欲との闘い、
真理にますます興味が湧いてきます。