神戸ホスピタリティ都市構想シンポジウム第4回研究会【前半】

家の庭にはさくらんぼの花が咲く頃となりました。2005年4月18日。

第4回目の神戸ホスピタリティ都市構想シンポジウム研究会のテーマは、「医療と周辺サービスにおける規制と制約、それを乗り越えるヒント」というテーマついて、3人の講師の方から発表がありました。場所は、ひょうごボランタリープラザ・セミナー室(神戸クリスタルタワー10F)です。

印象に残った発表の内容を簡単にご紹介したいと思います。


発表の1つ目は兵庫県立大学経営学部の安室憲一教授のお話です。

「タイの観光政策とリゾート型病院の経営実態について」がテーマです。

神戸医療産業都市のあらましによると、神戸の医療産業都市は、将来的には海外、特にアジア諸国の医療技術の向上に貢献できる拠点となることを目指しています。

そこで安室先生は、今回の講演の前にタイに行き、アジアの事例として実際に病院を10件以上見てこられました。

タイの調査には3/21~3/27まで現地を調査してきました。病院長に会ってインタビューも出来たようです。しかし患者へのインタビューは許されませんでした。写真も撮れなかったようです。

タイでは私立病院では株式会社で、株式を市場で公開している会社が11社あります。株式を公開することによって、どのようになるかを見ていきます。

まず資金が国際的に集まることによって、今まで大変難しかった高価な医療機器・設備が購入可能になり、サービスの品質が向上したということです。

これは、医療産業都市としても、医療をビジネスとしてとらえるための、良い参考となります。

安室憲一教授は、タイ国として日本人への期待は何なのかという質問を病院長にしてきました。

BNH病院長とのインタビューでは、全ての病院で日本語対応が可能になっています。日本語だけでなくドイツ語、英語、フランス語、韓国語、中国語が堪能な人が待機しています。

上場している会社はいずれも超高級病院です。現在の為替は、1バーツが3円です。30バーツ払えばタイでは誰でも基礎的な診療を受けることができるそうです。

しかし、それは一般の公立病院であって、私立の高級病院の顧客ターゲットは外国人の裕福層が中心になっています。

バンコクでは日本人が3万人ぐらい住んでいます。タイ全土では3万5000人です。他に、アメリカ人・ドイツ人・イギリス人が続きます。

これらの方々に言葉の問題を克服するように、まず言語対応ができています。そしてこの裕福層に対して、高級病院を展開していきます。

現在のところ、日本の健康保険制度は優れていて、これでは現在日本人はタイにまでわざわざ訪ねて医療を受ける人は少ないそうです。

タイは熱帯植物に溢れ、花は咲き、物価は安く、過ごしやすいところなので、松葉博雄としては個人的に魅力を感じています。

私立病院の医師は公立の10倍~20倍のお給料がいただけるそうです。それは歩合制となっていて、院長と最初に契約を交わします。

公立病院は3時間待ちの1分診療と言われるように、急ぐ方や重い病気の方の丁寧な治療は難しく、この場合は私立病院に行った方が良いと言われます。

タイは階級社会のようです。ある人が交通事故で頭に出血をともなう大怪我をし、病人を運びこんだところ、緊急であっても、何時間も順番待ちとなったことを事例に上げられました。

急ぐ場合は、民間の病院にお金を用意して駆け込まないと、早期対応は難しいようです。


有名な私立病院には、腕の良い医師が集まります。

私立病院1ベッドあたりの投資資金は600万バーツから1,000万バーツ、日本円にすると1800万から3000万円ほどの投資金額になっています。1ベットあたりです。

この設備投資は、金融市場から資金を得ることで可能になりました。2000年頃から私立病院が通貨危機から立ち直って上場が可能な状態となってきました。

病院には銀行の支援があり、銀行の系列下になっているようで、日本でももし株式会社の病院が出来るとすれば、多分銀行系の病院になる可能性を示唆しています。日本の銀行が病院を経営する日がやってくるのでしょうか。きっと規制や法律を大幅に変えることになるので、時間がかかりそうな気がします。

医師も技術研修のためには公立病院ではなく私立病院に技術研修を受けにやってくるようです。それは最新機器が私立病院にはあるからです。

神戸の医療産業都市構想でも、医師の技術研修まで行えるような高度な最先端の施設づくりを目指しています。

現在は競争激化も始まって、病院が総合病院からそれぞれの科目の専門病院へと移行する時代へきています。インタビューに応じたブン氏は医師なのか経営者なのか悩むことがあるそうです。


この病院では、300万バーツ投資して年率の成長率は80%を得ました。

主な得意先はアラブ首長国連邦の人たちです。この人たちは単なる病気ではなくて、整形手術だとか、あるいは老化防止だとか、あるいは性転換手術だとか、温泉療法などのエステ系に注力をしています。これらのターゲットには、近い将来日本人をターゲットとして考えています。

実際日本人の医師が何人かいたようです。わざわざ日本に日本人医師にもスカウトがくるようです。採用条件はまず英語ができることからです。

日本の健康保険以外にターゲットを絞って、日本人を患者として招きたいと考えているわけです。健康保険適用外のことをするということになります。総合病院から脱出し、専門性の高い病院にこれから移っていこうとしています。

シンガポールとの競争において考えれば、シンガポールの医療費は高いので、競争に自信があるようです。

シンガポールの中国系の病院のサービスは競争に弱い、ホスピタリティに劣るという考え方です。神戸の医療産業都市も、これらタイやシンガポール、中国などとの競争になるようです。国際的な基準でのホスピタリティが求められるのです。


最後に神戸ホスピタリティ病院構想は可能なのでしょうかという質問です。

タイの病院は現在はもう高すぎる状況になっています。一日1万500バーツ、日本円にして6万円ぐらいが最高で、平均2万5千円ぐらいまでの費用がかかります。

それをコンドミニアム形式にすればもっと安くなる、あるいは混合医療で行えば、あるいは任意保険の開発をすればもっと安くていい医療が受けられるのではないかという考えがあります。

それには医療保険の二階建てを考える、自動車保険のように、強制保険と任意保険の組合せです。

ホテルのような病院から、コンドミニアムタイプにしていくということです。安室憲一教授は、このような構想であればまだいけるのではないかという結論にいたったようです。