お任せあれ:お任せあれ、とクリスマスは松葉博雄がはりきることになりました。
お任せあれ:お任せあれ、とクリスマスは松葉博雄が奥さんへプレゼントをする日です。奥さんへのクリスマスプレゼントは、料理を作らなくてもいいこと、片付けなくていいことが、一番です。
お任せあれ:私にお任せあれ!とクリスマスは松葉博雄が、奥さんへプレゼントを贈る日です。奥さんにクリスマスプレゼントと、考えたとき、なかなか適当なものが思い浮かびません。結婚して、長らく一緒にいると、大抵のものは既に持っていて、いまさら何を選ぼうかと、困ってしまいます。
松葉博雄の周りの男友達に尋ねてみても、奥さんが喜びそうな的確な答えと、実践をしている人は、まず居ません。
会社の行事では、12月になると、賞与の査定や、慰労会、年末の歳末商戦の企画などをしてきて、後は、最終営業日の日を迎える時期になっています。
そうなると、今夜は、松葉博雄と奥さんの、二人で、かにすきで、忘年会をすることを、奥さんへのクリスマスプレゼントに、提案しました。
12月24日は、クリスマスイブで、神戸の繁華街にも、季節に沿った、冷たい風が吹くようになり、足元は震えるほどの寒さです。この寒さが、幸いして、寒いときにかにすきの提案は、受け入れられました。
西村屋を選んだのは、以前に、接客担当者であった、和田ユキコさんとの会話が楽しかったので、もう一度、接客サービスの心得についての、お話を聞きたかったのです。 蟹料理「大名コース」(14,175円)をいただくことにします。
予約をしなかったので、個室でない、大部屋で、他のお客様との相部屋でした。
他のお客様の会話が、よく聞こえてきます。目を引くのは、同伴出勤のカップルです。普段、家ではしそうもない、鍋奉行のサービスを、お父さんの世代の人が、お嬢さんにしているように見えます。
西村屋のかには、本店がたじまの城崎にあり、料理旅館なので、温泉に浸かって、かに料理を食べて、泊まると言う、一日楽しめる一泊旅行コースには最適です。
城之崎から送られてきたかにには、産地を証明する、タグがつけられています。
かには、まず、かに味噌です。
かに味噌が、食べやすいように、包丁で、かにの甲羅の上に、皿盛りされていて、ビールを飲みながら、かにを口に入れると、たまりません。なんと美味しいことか。
いよいよ、かにすきです。食べやすいように、かにの殻は半分とってあります。これなら、自宅で食べるときのように、殻を割って身をだすのは、大変じゃありません。
近くの同伴出勤の、お話が、聞こえてきます。
「正月どうする?」「ゴルフ?」「まだ何も考えてないんやったら、初詣いかへん?」と、これだけ聞いただけで、このカップルの、今日の目的、ふたりの親密度、これからの進展などが、だんだんと、興味を呼んできます。
サービス係の人に、和田ゆきこさんは、おられますか?と尋ねて見ると、一昨年に退社されたと言うことでした。ここでは一番、長い勤務期間だったそうです。
ひとつの鍋をつつきながら、奥さんへの、クリスマスプレゼントとして、話を盛り上げるためには、あれやこれや話題を変え、昔の話に、今の話、そしてまた、身近な人の話や、子どもたちの話を、倉庫の棚から、引き出すように、たくさんの話題を次々に繰り出します。
今日の奥さんの具合は、年末の行事に疲れて、やや、疲労困憊のようです。なかなか、皿に盛ったお料理は、進みません。
もったいないので、松葉博雄が、責任とって食べようと思っても、それほど食べれるものではないし、鍋は、むしろ取り合いしなければ、食は進みません。
大きなとっくりに、昆布でとった追加の出汁が用意されています。かなり高級な昆布でとった出汁のようです。しかし、前回来たときの出汁と、今日の出汁が少し違いがありました。
気になって、「この出汁の味は、いつ来ても、同じ味なのですか」と、尋ねてみると、どうやら、調理人や、時期によって、味にばらつきがあるとのことでした。
昆布の仕入れによって、違うのでしょうか?それとも、調理人の味覚のばらつきでしょうか?サービス係の女性には、調理場の奥のほうのことは、分からないそうです。
かにすきの最後の仕上げは、卵と薬味を入れてカニ雑炊になります。
サービス係の人に、奥さんが尋ねました。「研修の中に、実際に、お客様にだす料理は、従業員の人たちも食べているのですか?」「全然です。一度も食べたことはありません。食べたいんですけど、賄いにでも出てきたらいいんですけど・・・」と言った具合でした。
松葉博雄は、日本銀行の行員さんが、日銀が刷った一万円札の値打ちを日銀の奢りで、外に出て使ってみることもないし、DE BEERSの従業員が、会社のダイヤモンドを、会社の奢りで、身につけることもないし、まぁそんなもんでしょうと、奥さんに解説しています。
係りの人が、手早く溶き卵と薬味をなべに入れ、ほぐしたカニの身を鍋の中に入れていきます。ご飯を入れてさっと混ざれば、カニ雑炊の完成です。
サービス係の女性は、煮詰めた鍋の出汁を薄めるために、追加の昆布だしを用意してくれ、どのくらい追加するのか、味の濃淡のお伺いをしてきました。
ワインの味利きをするように、松葉博雄は、鍋に追加された、追い出しの味をれんげにすくい、少し冷まして飲んでみます。薄すぎもしない、濃すぎもしない、ぴったりの塩加減の出汁加減になりました。
お勘定は、メニューのとおりで、特別なサービス料は要りませんでした。レジのところに、アンケートカードがあります。アンケートカードには、印象に残った従業員の名前を聞かせてくださいとあります。
それなら、和田ゆきこさんです。
2010年12月24日(金)