須磨浦公園の展望台で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のロケット講義を聞く
2006年10月のお休みの日です。
松葉博雄は、旧友と再会しています。
旧友は、ロケット工学の専門家で、これまで、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に勤務し、人工衛星の姿勢制御を受け持っていました。
人工衛星をロケットで打ち上げて、軌道に乗せることと、軌道を修正することが姿勢制御になります。
人工衛星の補助燃料を使って、軌道を変える計算は、一回だけの姿勢制御なら、割りに簡単に、大学院の修士レベルでも計算できるそうです。
それが、2回、3回と連続して微妙な軌道修正計算となると、大学院の博士課程とか、教授クラスのレベルでなければ、計算できないそうです。
須磨浦公園のロープウェイのゴンドラに揺られて、宇宙の難しい計算を聞きながら、だんだんと視界が変わってくる、大阪湾を見ています。
ロープウェイは、軌道修正がないので、直線を行ったりきたりするだけなので、これなら、松葉博雄も運転できそうです。
眼下には、須磨浦公園の海釣り公園が見えます。
だんだんと頂上が近くなるにつれて、淡路島や、和歌山の方向までが見えてきます。
須磨浦公園に来るのは、もう、2、30年ぶりだと思います。
すっかり寂れてしまって、回転展望台の側のレストランは、平日は休止していて、土日祝日しか開いていないのです。
ここで昼食と思っていたのに、回転展望台のカフェが頼りになってしまいました。
回転展望台は、4、50分かけて1周します。
ゆっくりと周りの景色が変わってきて、ロマンスを語るにはなかなかいいところですが、今日はロケットの旧友と、昔話をしています。
周りを見ても、回転展望台には、お客さんがほとんどいません。
カフェのメニューも、レトルト食品のドライカレーかえびピラフで、これを電子レンジで温めて、お皿に入れるとできあがりです。
ところが、意外にこれがおいしいのです。なぜかというと、お腹が空いているからです。あまり期待していなかったからです。
値段は、1食490円で、これを缶ビールと一緒にいただいて、3回転するまで、約3時間周囲を見ながら、宇宙の話やら、家族の話、リタイア後の将来設計について話しました。
お昼の太陽は、少しずつ西に傾き、明石海峡に沈む秋の夕日は、なんとなく、源氏物語の須磨・明石を思い出させるような、ものの哀れを感じさせてくれます。
明石海峡には、橋がかかり、その向こうには淡路島の岩屋あたりがうっすらと見えています。
旧友のロケット研究者は、いつも携帯しているものがあります。
それは、世界中どこに行っても、自分は今どこにいるのか、西なのか東なのか、分かるようにGPSを持っています。
もうひとつは、世界中から、インターネットを使って、無料で通信できる携帯電話を持っています。
さすがは宇宙工学の先生で、星を求めて宇宙を運行する衛星のように、彼自身もこれから世界中をまわり、自分自身の居場所を探したいようです。
こんなところに、いるのが、必ずいるのが、いちゃいちゃアベックです。
大事な話をしているのに、いちゃいちゃとくっついて、なかなか離れません。
だんだんと、展望台の終了時間が迫り、公園のおじさんがやってきて、「早く帰るように」と言われて、しぶしぶアベックさんは去っていきました。
世界中、どこからでも、彼と松葉博雄は、連絡が取れるように、無料の通信方法を教えてもらい、インプットしました。この後、彼からは、どこから連絡が来るでしょうか?
時間と空間を越えて、光と電波により、旧友と自由な交信ができることを教えられ、勉強になりました。