パナマ文書は、納税の不公平感をいかにして鎮めるかという、当局への課題でもあります。(総集編)
もたつく景気、内憂外患、消費息切れ、株安円高に次いで、パナマ文書です。
ドイツの新聞社に送られてきた、タックスヘイブンに関するこれまで隠されていた情報は、イギリスや中国の政治家のトップの名前を挙げています。
今の所は、日本以外の外国の著名人の名前が少しずつ挙がっていますが、まだ日本人の名前が挙がっていません。
大胆な予測ですが、パナマ文書の分析が進む前に、衆参同時選挙を済ませてしまおうと思う、隠れた力が働くかもしれません。
カリブ海の島にある租税回避を専門にアドバイスする法律事務所は、その存在は過去からなんとなく知られていましたが、今回は膨大なデータが、実名入りで流出しているのです。
この中に日本人の政界、財界、芸能界、スポーツ選手、若手起業家などの名前と、その内容が公表されるようになると、日本でも大騒ぎになる可能性があります。
もし、政界に飛び火すれば、この先の政治はどのように変わるのか、激変する可能性があります。
パナマ文書の公表が進めば、いい話より悪い話の方が出てきそうなので、心当たりのある資産家は、今からさぞ心配していることだと思います。
2016年4月10日(日)
パナマ文書が示す教訓として、英エコノミスト誌の記事を、日本経済新聞社が掲載しています。 社長ブログ神戸/日本経済新聞/パナマ文書
『パナマ文書が示す教訓』と題して、英エコノミスト誌の記事が日本経済新聞の2016年4月12日付で掲載されていました。
新聞の第八面の下の方に、あまり目立たない記事でしたが、この先日本にも大きな影響がありそうなので、注意して読んでみました。
パナマ文書とは
パナマ文書とは、パナマの法律事務所モサック・フォンセカから流出した、顧客データです。
タックスヘイブン(租税回避地)を求めて、自国の金融資産を海外の租税の軽いところへ移す、租税回避行為のデータです。
企業でも、団体でも、個人でも、誰でも課税される税金を軽くしたいという気持ちはあると思います。
パナマ文書の示す教訓
それが、ルールを超えた行為であれば、節税から脱税へと発展してきます。
今回のパナマ文書の示す教訓は、
①作られた金融資産が、国境をまたいで比較的課税の緩やかなところへ移されている。
②資産形成の一部には、政治的な立場を利用した、汚職の疑惑のある資産が含まれている。
③政治的リーダーや国家元首のような、市民に納税を求める立場の有力者の氏名が挙がっている。
これでは、その国の一般市民から強い抗議が出るのも当然です。
何故問題になっているのか
英エコノミストが指摘する問題点は、
①腐敗は世界を貧しくし、格差を広げる
②政治家が公金を利用すれば、道路や学校の建設、補修に使われるお金は減る
③親しい友人が有利な条件で契約できるようにすることは、納税者をだまし、企業に自国への投資を思いとどまらせることを意味する
④これら全てが経済成長を阻害する
汚職撲滅の一般的責任は、各国政府にあります。
タックスヘイブンを一掃しても、汚職はなくなりません。
汚職で蓄財した資産を海外に移し、国民の目から隠す事は、そんな事が出来ないようにするしかありません。
政治家や、関係者などがそう簡単に財産を隠せなくなれば、事態は改善するだろうと指摘しています。
だから、企業の匿名性を厳しく取り締まり、不正に得たお金を洗浄するのを手助けする業者を取り締まるために、グローバル協調が必要だと主張しています。
ペーパーカンパニーの実態とその対策
法律事務所にも、規制の強化を呼びかけています。
パナマ文書に書かれている案件では、多くの場合「お雇い名義人」の影に隠れ、真の所有者が表に出てこない正体不明のペーパーカンパニーが絡んでいます。
こうしたペーパーカンパニーは、脱税やマネーロンダリング(資金洗浄)に手を染めている人や、不正を働いた政府機関者の「逃走車」のような役割を果たしています。
逃走車の窓ガラスは、中が見えないように着色しています。
実質所有者の中央登録機関のようなものを創設し、税務機関や司法当局はもちろん、一般市民にも公開する事で、着色した窓ガラスを無色透明にしなければならない。
虚偽の会社登録に対する罰則規定も厳しくする必要があると主張しています。
仲介する法律事務所や、その他の仲介業者にも規制をかけなければなりません。
法律事務所などは本来、顧客の素性を把握し、怪しければ排除することになっています。
しかし現実は、袖の下を渡され、詮索してくる人間から顧客を守る緩衝材のような役目を果たしている法律事務所や業者があまりにも多いと指摘しています。
このような状況は変えなければなりません。
政府は第三者が脱税を可能にするような行為をしたら、刑事罰に問えるようにすることが求められています。
このように、英エコノミスト誌はパナマ文書が示す教訓を記事として掲載してました。
読めば読むほど、その通りだと思います。
記事が出た2016年4月12日現在では、まだ日本の企業や日本人の名前は出ていません。
もし、分析が進んで、日本に関する企業や氏名がパナマ文書に含まれていれば、大きな問題になりそうです。
2016年4月12日(火)
週刊新潮の記事によれば、海外に資産を管理する会社を作ることは、割と簡単なようです。早くストップをかけるべきです。社長ブログ神戸/週刊新潮/パナマ文書
週刊新潮2016年4月21日号の記事に、「パナマ文書」特集読解ガイドの記事が出ました。
パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出したパナマ文書のデータの量は、実に2.6テラバイトで、文庫本に換算すると、2万6000冊分もの膨大なデータ量です。
デジタルカメラで撮影した写真で、65万枚にも及ぶ膨大な量です。
「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)によるパナマ文書の分析
パナマ文書の分析は、60カ国以上のジャーナリストが参加する報道機関「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)によって、分析が進められました。
カリブ海のバハマや、英領ヴァージン諸島、大洋州のクック諸島、サモアなどがタックスヘイブン(租税回避地)に、会社を設立すれば、その会社は所得に対し、無税または名目的な課税しかされません。
各国の税務当局は、登記簿謄本すらとれません。
名前の挙がった著名人達
これまで名前が挙がっている著名人は、中国の習近平主席、ロシアのプーチン大統領、イギリスのキャメロン首相といった大国の指導者の名前が挙がっています。
日本人は400人とも言われていますが、今のところ固有名詞が上がっているのは、セコムの飯田亮最高顧問の1人だけです。
ICIJと提携している朝日新聞と共同通信社の報道によれば、パナマ文書には、日本に関わる人や企業が約400も含まれているそうです。
何故タックスヘイブンに会社(ペーパーカンパニー)を作るのか
香港在住の投資コンサルタント笹子善充氏によれば、タックスヘイブンに会社を作れば、法人税などあらゆる税金がかからず、決算を報告する必要もないため、会社の口座は、その代表者の財布とほとんど同じになるようです。
こうなると、相続税を支払うことなく、後継者に資産を引き継ぐことが出来るようです。
因みに、日本の相続税率は、最高で55%と、他国に比べ、高めに課税されています。
日本の株式譲渡益課税は、20%。法人税は、国と地方を合わせて約30%です。
これがタダとなれば、タックスヘイブンに目が向くのもやむを得ないとしています。
最近では、日本の法律事務所などでも、海外でペーパーカンパニーを作る事を請け負う法律事務所もあるようです。
この場合必要なのは、パスポートと住所証明が出来る書類等です。
設立するためのその期間は2~3週間ほどで、費用も25万~30万円で済みます。
不公平な課税を浮き彫りにしたパナマ文書
各国政府も、自国から富が流出するのを恐れて、タックスヘイブンやプライベートバンクへの規制を強化しているようです。
いくら規制しても、新しい逃げ道が作られ、いたちごっこが続いていくのではないかと予想しています。
すでに、日本企業は、ケイマン諸島や、バミューダ諸島などに、アメリカに次ぐ数のSPC(特別目的会社)を作っているといわれています。
その流れは、今後も止めようもないようです。
パナマ文書の存在は、私達に課税の不公平性を、問題提起しました。
一般に一番所得を正確に捕捉されるのは、給与所得者です。
国民全体に向けて、マイナンバー制度も始まりました。
課税に対して透明性の高い一般市民・国民が納税の義務を果たしていることに対して、裕福層が不公平な納税をしていることが明らかになれば、この不満は政府に向けられると思います。
2016年4月17日(日)
資産100万ドル(1億1千万)以上の富裕層は、日本で212万人います。課税強化と、節税の知恵比べです。社長ブログ神戸/パナマ文書
週刊文春の記事を読み返しています。
週刊文春4月28日号の記事によれば、日本の政治家の名前がパナマ文書に出てこない、本当の理由があるそうです。
日本の政治家は、政治団体を使った資産継承が可能だそうです。
「日本では、政治団体に寄附すれば、非課税になります。
さらに、政治家が一つだけ指定できる資金管理団体への寄附は、税金の特別控除を受けられます。
安倍晋三首相は、約数億円の献金を集めていた、父・安倍晋太郎氏の政治団体を引き継いでいます。」
小泉進次郎氏も衆議院選に出馬する際、進次郎氏の政治団体が、父・小泉純一郎氏の政治団体から寄附を受けていたようです。
「以前より厳しくなったが、個人の政治団体への寄附の上限は、年一千万円。いくつかの団体に分散させた上で、政治団体を継承させるか、子供の政治団体に寄付すれば、相続税はかかりません。」
このような、日本独自の仕組みになっているので、日本の政治家は、パナマ文書に名前が出てこないという内容の記事でした。
なるほど、日本では、政治家には、既にタックスヘイブンが存在しているのです。
これでは、一般の人達が、所得税や、相続税で沢山課税されるのに対して、大変な優遇措置があり、その優遇措置を決めるのも、政治家です。
日本経済新聞4月30日付の記事では、『パナマ文書が問う』というコラムがあります。
クレデジ・スス証券によると、純資産100万ドル(約1億1千万円)を超える富裕層は、日本に212万人いて、世界では第三位だそうです。
富裕層へは所得税と相続税が待っています。
これを軽減したくなるのは、気持ちとしては自然な事で、資金の海外流出が止まりません。
マレーシアのラブアン島には、相続税がゼロの措置があるので、アジアからのマネーが流れ込むそうです。
他方、課税する税務当局も、富裕層の資産の捕捉に努めていますが、限界があるようです。
国税庁は5千万円を超える海外財産を持つ人に、報告を義務づけています。
資産家が海外移住する際には、一定以上の株式含み益に所得税をかける出国税も用意されるようになりました。
課税が強化されると、稼いだ人間は損をすると考える風潮も生まれてきます。
資産家は日本から逃げようとし、税務当局は追いかけようとしています。
パナマ文書が問いかけている問題は、納税に対する不公平感です。
5月1日付の日本経済新聞の『パナマ文書が問う(中)』のコラムでは、パナマ文書の問題点を課税の透明性と、公平性をどのように担保するかと、指摘しています。
ロンドンでは、キャメロン首相の辞任を求めるデモ、アイスランドのグンロイブソン首相らは、国民から「不公平だ!」と糾弾されています。
週刊文春の記事と、日本経済新聞のコラムを比較してみると、日本では、政治家が後方的に課税会費を可能とする、政治団体を利用する方法があるので、他国とは、政治家に対する、課税の不公平に対しての抗議が起きるかどうか、これは今後国民が判断する問題になりそうです。
2016年5月1日(日)