切幡寺の多宝塔には、ブッダの教えが漢訳されて、伝わってきているでしょうか。

切幡寺の長い石段を上りながら、ブッダが修行僧に伝えたことばを思い出します。  四国八十八ヶ所巡り(6)

四国霊場第十番札所 切幡寺のお詣りです。奧さんと長い石段を、腰をいたわりながら上っています。上りながら考えたのは、ブッダの教えです。ブッダは、修行僧達に対して、このように言われました。

①最上の善い言葉を語れ。

②正しい理(ことわり)を語れ。理に反することを語るな。

③好ましいことばを語れ。好ましからぬことばを語るな。

④真実を語れ。偽りを語るな。

(出典:ブッダのことば 喝 450)

山麗から本堂まで約800メートルぐらいだそうです。333段の石段を上ってきました。

ブッダが悟りを得て、初めて初転法輪を説いた時から、ブッダの教えは、相手に合わせて、分かり易い言葉を使ったり、たとえ話を話したり、難しい表現を使ったり、いわゆる対機説法を行っていました。

今の時代に、ブッダの言葉は直接聞くことは出来ませんが、残した言葉は、読む事が出来ます。

ブッダの言葉を読むと、生きていくために普通の事を教えています。

それが中国に仏教が伝わり、漢字に変換され、中国から日本に漢字教典が伝えられる段階で、仏教は、珍紛漢紛、訳の分からない、難しい教えに変わっています。

その結果、ブッダの教えは難解になり、珍紛漢紛の言葉が、かえって有り難く思えるようになっています。

このように考えながら石段を上り終えました。切幡寺は、切幡山の中腹、標高155メートルに境内があります。国指定重要文化財である大塔からの眺望はすばらしく、眼下には吉野川がゆったりと流れ、前方には四国山脈の雄大な山々が連なります。

古く、この山麓に機を織る乙女がいました。ここで修法していた弘法大師は、結願の7日目、綻びた僧衣を繕うために布切れを所望されました。

乙女は、織りかけていた布を惜しげもなく切って差し出しました。大師は、この厚意に大変感動し、「何か望みはないか」と尋ねました。

乙女は、「父は都で薬子の変に関係して島流しとなり、母は身ごもっていたが、男の子が産まれればその子も咎を受ける。

どうか女の子が産まれるようにと、清水の観音様に祈願し、やがてこの地に来て産まれたのが私です」といい、「亡き父母に代わり、観音様をつくってお祀りし、わたしも仏門に入って精進したい」と願いを告白しました。

大師はつよく心を打たれ、さっそく千手観音像を彫造し、乙女を得度させて灌頂を授けました。乙女はたちまちのうちに即身成仏し、身体から七色の光を放ち千手観音菩薩に変身しました。

大師は、このことを時の嵯峨天皇に伝え、天皇の勅願により堂宇を建立して自ら彫った千手観音像を南向きに、また即身成仏した千手観音像を北向きに安置して本尊にしたと伝えられています。

得度山、灌頂院、切幡寺それぞれの名称もこうした由縁によるもののようです。麓には遍路宿があり、巡礼用具店などがならぶ門前町となっています。

「女人即身成仏の寺」として知られ、七色の光を放つ善女に憧れる女性からの人気が高いようです。

(以上 四国八十八ヶ所霊場会 公式ホームページより)

切幡寺大塔は国指定重要文化財で、初重と二重の間が方形で、日本唯一の構造様式だそうです。

切幡寺大塔の前に立つと、遠くインドで発祥したブッダの教えが中国に伝わり、やがて日本に伝わって来た時には、形の見えるお寺などの建築物は、中国風で伝わって来ていることがわかります。

切幡寺大塔の前は、眼下に徳島の阿波市の街が一望できる絶景です。

修行僧のいるお寺は、街の誘惑を避けるため、出来るだけ人里から離れています。

ここなら、今で言う色里や、肉食のグルメから離れて、弘法大師の教えを学ぶ、静かな環境にあることが分かります。

今日は、11月の末にしては温かい気温と、降り注ぐ太陽で、ここの切幡寺大塔にきて良かったと思います。

多くの修行僧は、ここで真理を求めて、悶え苦しんだ事だと思います。

多宝塔の中には、きっとたくさんの教典と仏像が納まっているように思います。心配なのは、何しろ木造なので、火事の心配です。

こんな、日本の優れた文化を燃やしてはいけません。

火事の心配は、人から発生するだけではありません。雷も、昔から火事の原因になっています。

もったいないなぁ、こんな美しい多宝塔が燃えたらもったいないなぁ。絶対に守らないといけないと思います。

明日はきっと、筋肉痛になりそうと、奥さんは心配しながら、多宝塔などの長い石段を、松葉博雄の後からついてきています。

ぜひ、こんな素晴らしい眺望を、奥さんに見てもらいたくて、ついて来ているかどうか、心配して待っていると、かなり遅れて、奥さんも多宝塔のあるところまで、石段を登りつめて来ました。

切り株に座って、しばし呼吸を整えます。切り株に座った位置から、多宝塔の緩やかな屋根の曲線を、しばし見入っていました。

なんと素晴らしい美しさでしょう。この、多宝塔の中には、きっと多くのブッダの教えが、漢訳された書物になって、納められているのだろうと想像します。

奈良や京都に、沢山の古い木造建築がありますが、このような四国の土地にも、古くからの美しい木造建築物が残っていることに、感動しました。

2014年11月27日(木)