食べ残す理由は何ですか?何か不都合なことがありましたか?なかなか聞きにくいこの質問は、長期的な関係を作る顧客サービスには大事なことです。
淡路島ツアー(5)
明石と岩屋を繋ぐ本四連絡架橋が出来る前には、淡路と本州は連絡汽船で結ばれていました。
東浦町大磯では、三洋電機を親会社とする淡路フェリーボートが大磯港と須磨港を50分ほどの時間で運行していました。この頃は、大磯港の乗降客は大変な賑わいで、港の傍の、お好み焼・明石焼の「小磯」も、いつもお客さんで溢れていました。
松葉博雄は子ども達を連れて、かなり前からこの小磯に来ていましたが、その頃は、お客さんが多くて、お店の女将さんも、顔を覚えてくれていませんでした。
最近は、小磯には地元客が中心で、固定客が多く、以前のように淡路フェリーボートの一見客を頼りにお店を運営している時代とは、すっかり変わりました。
松葉博雄と奥さんは、小磯の女将さんと顔馴染みです。ネギ焼きと焼きめしを作って貰う間、ビールのアテに、おでんの牛すじ、こんにゃく、豆腐を頂きます。どれも一品130円です。
小磯の女将さんは鉄板が担当で、旦那さんは明石焼きが担当です。
アサヒスーパードライの瓶を頂いて、焼きめしとネギ焼きが出来るまで、おでんで凌いでいます。
顔馴染みになると、会話が始まります。ナンパの時のように、会話のストーリーは住んでいる場所の話、淡路でどんな所に行ったかとか、神戸の三宮はこんな所を知っているとか、当たり障りのない話です。
向かいの渡舟食堂で話すように、家族のことや仕事のことまで、深く入り込んでいません。渡船食堂と小磯は親戚なので、共通の知っている人の、誰か実名を挙げて話をすれば話は盛り上がるのですが、まだそこまで打ち解けていません。
何しろ、小磯では松葉博雄のことを、エステティックの社長さんと思っていたようなので、もっともっと相互理解が要るようです。
焼きめしとネギ焼きが出来ました。焼きめしを食べていると、これはひょっとして、バターを使っているのではないかと異変に気がつきました。そこで、少し食べただけで、残していました。
小磯の女将さんは、お客さんのことをよく見ています。松葉博雄が焼きめしを残しているのを見て気になるのか、近づいて来て、「塩を掛けすぎてましたか?」と、声掛けしてくれました。こんな声掛けこそ、成功するナンパです。
お客さんが、何故注文した焼きめしを食べないのか?こんな、問題意識を持つことこそ、顧客に対する顧客志向なのです。最初は言葉を濁して、お腹いっぱいでと答えていたものの、やはり本当の事を言った方が、顧客と店の信頼関係が出来ると思い、思い切って「バターが苦手なので」と、バターのことを言うと、とっても納得してくれました。この次には気をつけます、忘れてたら言って下さいと平身低頭でした。
明石焼きを食べていると、お店のテレビでは、読売テレビの「TEN!」という情報番組をやっていて、「アナタの味方!お役に立ちます!」のコーナーでは、浅越ゴエが「洗います!真っ黒焦げコンロ」と題し、一般視聴者のキッチンに入り、コンロを洗っていました。
主婦が、他人に最も入って欲しくない場所は台所です。主婦が、他人に絶対に見せたくないのは、冷蔵庫の中です。
番組では、遠慮無く冷蔵庫を開け、賞味期限をチェックし、あれもこれも賞味期限が切れているのを笑いものにしていました。
これは、他人のことなら笑えても、自分がされたらとても嫌なことです。つまりハイヒールを履いた人が、他人の足を踏むようなもので、踏まれた人は、飛び上がるほどの痛みがあり、踏んだ人は何とも感じないようなものです。
芋掘りツアーと、洲本市への近隣ドライブが終わり、お家に帰ってみると、朝、おはようございますとにっこり笑って挨拶してくれた琉球アサガオは、すっかり元気をなくし、花の色も変わっています。
代わりに、お帰りなさいと、にっこり笑顔で出迎えてくれたのは夕顔です。夕顔は、アサガオに代わって、これから夜勤です。この夕顔も、翌朝にはすっかり萎れて、早朝にはアサガオと笑顔の交代です。
2012年10月4日(木)