神戸ホスピタリティ都市構想シンポジウム 第3回研究会
3月に入って、神戸ホスピタリティ都市構想シンポジウムの第3回目の研究会テーマは、「ツーリズムとホスピタリティのあり方」ということについて、3人の講師の方から発表がありました。2005年3月14日
会場はいつもの神戸クリスタルタワー10Fです。写真を比べてみると、どことなく春らしく空も明るくなっています。もう少しすると、ツバメが飛ぶ姿も写ると思います。
ガラス張りの高層ビルに野鳥が空と間違えて激突してしまう事例もあります。野鳥さんは気をつけてください。
医療産業都市構想で作った最先端の医療施設にどのようにして人々を集めるかとなると、日本の医療は今まで、あまりサービスということを考えたことがないので、ノウハウがありません。
しかも医療が目的で訪れるわけですから、日帰り温泉のようにパッと行ってサッと帰るわけにはいきません。長期に渡って治療を行うときに、患者となる本人を始め、家族や周囲の人たちへのサービスは、長い時間を経過して評価されることとなります。
そこで、いわゆるサービス業の専門家の方々をお招きして、人をもてなす、ホスピタリティとはどういうことなのか講義をしていただくこととなりました。
今日の神戸ホスピタリティ都市構想シンポジウムの発表の1つ目は『都市観光とライフスタイル』について、阪南大学の貴多野乃武次先生から発表がありました。
2つ目は『コンシェルジェ・サービスが創るおもいやりの街』というテーマで、株式会社クラッシーの植田社長から発表がありました。
3つ目は、『ホスピタリティのあり方』というテーマで、ひょうごツーリズム協会の矢島講師から発表がありました。
最後に、兵庫県立大大学経営学部の安室憲一教授から研究成果のまとめが行われました。
この中で特に印象に残った話しは、3つ目のひょうごツーリズム協会の矢島講師による「ホスピタリティのあり方」についての報告でした。
矢島講師は、元航空会社の客室乗務員、つまりスチュワーデスさんをされていました。長い間サービスを提供する経験の中で、「サービスとは何であるか」ということを実際に学ばれたようです。
サービスというのは元々語源はラテン語のServusで、奴隷の意味です。
そこから発生してSlave(奴隷)、Servant(召使)と広がります。この関係は主従の関係であり、一方的で強制を伴うものであります。
一方、ホスピタリティというのは、客人をもてなすということになります。
Hospitalが病院で、Hotelが宿です。これはゲストとホストの関係になります。ゲストとホストが心からお互いをもてなす気持ちがホスピタリティです。サービスとはちょっと意味が違います。
日本にも、茶道があります。お茶の席では、亭主と客人が対等の関係にあり、亭主は客人を心からもてなすことに努めます。相手を喜ぶようにもてなす、これが茶道での「サービス」です。
西洋でも、東洋でも、分かりやすく言えば、サービスは「相手を喜ばすように努める」ことになります。
学問の世界では、サービスの定義をめぐり、延々と何十年に渡り、議論が続いています。サービスは分類化され、なんとか科学的な定義をしようと研究者達は努力していますが、一般的に誰にでもわかるような、「一言で言えば、サービスとは」が難しいのです。
今日の発表であったことは、たくさんのサービスをしている中でサービスには結果的に成功する場合と失敗する場合の話がありました。
成功した事例としては、相手のすることを一歩先を読んで、気を遣って行った時に、相手の方がそれに感動してくれた時が成功です。例えば、お弁当を食べ始めたら、サッとお茶を出すことです。
失敗事例は、一歩先を読んだつもりでも、その方にとってみると「余計なお世話」という結果になるとこれは失敗事例で、むしろ相手の方が怒ってしまうこともあるようでした。
例えば、足が不自由なように見えた方に、車椅子を勝手に用意して、どうぞとお勧めしたとき「私は自分で歩けます」と言われたときだったそうです。
体の不自由な方への気遣いは、医療の現場では日常茶飯事です。現場で患者様やそのご家族と接するスタッフへの教育訓練の重要さを感じました。神戸の医療産業都市でも大変参考になるお話でした。
2つ目の「街のコンシェルジェ」についての印象では、特に病院に急に入院が必要になった時に、入院しなければならないことは分かるけど、しかし、自宅に残してきたことが心残りであることがある。
例えばペットがいるとか、あるいは老いた両親がいるとか、幼い子供がいるとか、そのような場合に「自分が病院に入るとこの後どうなるのだろうか」ということに対して、これをケアしてあげるところまで病院は考えておりません。
それを街のコンシェルジェが病院の中に入って提携し、そのような困った事例に対して解決していくという取り組みは、実際は10年前の神戸の震災の時にもあったそうです。
職場に復帰しないといけないけれど、しかし家には幼い子供がいる、あるいは年老いた人がいる、このような時に間に入って解決していけるコンシェルジェがあるといいなということになります。
安室憲一教授のまとめは、医療産業都市で必要となるホスピタリティは、パートナーシップを超えて、ゲストとキャスト、パートナーシップという3つの三角形を作っていく、これが鍵になるということが改めて分かったということです。
ホスピタリティは思いきり生産性を低くしていくという考え方に、改めて今日なるほどと考えさせられたと言われました。
これはビジネスで標準化とは違う、あるいは効率化を求めることとは違うということです。
専門家が集まり、チームを作り、力を出していく集団、こういうものをたくさんの人が登録しあって創っていくという考え方はこれからいるのではないかと言われました。
矢島講師の今日のサービスについての考えは、過去、現在、未来を考える顧客を考えるということを提案されています。
それはその人がもつ生涯シェアを考えることになります。生涯価値というのはその人が一生の間に何回車を替えるか、あるいは一生の間、どれだけビールを飲むか、その方の個人のシェアを取り合うことになります。
そのためには相手のことが良く分かったマーケティングが必要になります。医療産業都市ということを考えると、医療の現場にも、マーケティングの思想が求められていることがわかります。
総論として、医療産業都市としての神戸市にたくさんの人を招く、来てもらうためにはどうしたらいいのか、今日は深くホスピタリティを考えることができる研究会となりました。