揖保川の「正起」の若鮎
今年も鮎の季節がまもなく始まります。電話してみると、揖保川の「正起」では若鮎の稚魚ですが、もう始まっているということなので、行ってみました。
ここのお店の若夫婦は、仕事熱心で、愛想もよく、最近はすっかり顔なじみになりました。夏場が中心の造作なので、冬になるとややお店の経営は不利になりそうです。まずは鮎の供養塔に手を合わせ、お参りをしました。
ここのお店の造りは、ほとんどの造作を、ここのお店のご主人が日曜大工の延長で作ったとのことです。
本当の手作りの茶屋風です。近くに流れる揖保川の鮎を、釣った釣り人から買い受けて、料理に出しています。自作の座敷なので、やや背丈が低く、ところどころ天井に頭が当たる箇所もあり、その辺は身をかがめて歩いてください。
鮎の釣り方は、友釣りなので、最初に元気なオトリの鮎が必要です。そこで、正起では釣りの最初に種となる鮎を販売しています。この鮎を仕入れて、それから友釣りを始めます。
つまり、正起では、最初に鮎をオトリ用として売り、それで釣れた鮎を買い入れます。売って、その後買うので、最初と終わりにお金が出入りすることになります。鮎の甘露炊きは、サイズの大きい鮎だったので、きっとこれは天然ではないと思います。
まだ鮎は稚鮎なので、塩焼き用の鮎は、一匹のところ、二匹盛りで一皿となっていました。今年一番の若鮎をいただいたあと、周りには、他のお客様もいないようなので、ちょっと失礼して、座布団を枕にしばらく昼寝タイムとなりました。
しばらく寝ていると、なにやら足元でモゾモゾするので、目が覚めて、動く正体を見てみると、なんとかわいらしいトカゲが何匹かモゾモゾと動き回っていました。トカゲも私に気づかれたことが、まずいと思ったようで、サッと部屋の隅に逃げ込んでしまいました。
私はカメラを持って、トカゲちゃんに近づき、行動を観察し、撮影をしました。
トカゲは尻尾は長く、一昔の恐竜の名残を持っています。もし、私よりもトカゲの方が体のサイズが大きい時代なら、立場は逆転し、私のほうが急いで逃げることになります。きっと、人類はトカゲから逃げていた時代があったはずです。
トカゲに目が覚めて、川原の草を見てみると、川の風に吹かれて、まるでリズムに踊る人形のように川の草は身をくねらせて踊っています。風は、目に見えることはありませんが、風を受ける草によって、間接的に今日の風は目に見えることがありました。風は私に何かを話しかけているようで、じっと草の踊りを見ているうちに、風のささやきを少し聞くことができました。
格子の向こうには、揖保川の川の流れが見えます。昨年は渇水のあと、台風のための増水があり、川は大変大きな影響をうけました。川の中州にあった木も、流れにさらわれ消えてしまっています。向こうの方には、橋をかける橋桁が見え、ここにも景色が変わりそうな気配です。
川の向こうから、釣り人が釣れた魚を持って正起にやって来ています。釣り人にお願いして、今日の成果を見せていただきました。昔のビクと比べると、今どきのビクはびっくりするようなスマートな形をしていて、これがビクとは思えませんでした。
アルミで作った流線型のビクは、持ち運びには軽くて、水の入れ替えにも便利なように隙間ができていました。
中を開けて、鮎を見てみると、稚鮎のようで10センチ程度のサイズでした。中に少し大きいのがいたので、これはどうしたのですかと尋ねてみると、大きいの はここで買ったオトリの鮎です、と言われました。そうだったんです。
オトリの鮎は一回り大きいサイズで、強そうな鮎でした。今年は、この正起に何回来ることになるのでしょうか。次回をまた楽しみにしています。
2005年5月26日