美味しいご飯の炊き方 鉄釜の蓋に穴を開けると、沸騰を緩和し、煮こぼれの流出を防げます。
美味しいご飯の炊き方 鉄釜の蓋に穴を開けると、沸騰を緩和し、煮こぼれの流出を防げます。 鉄釜の蓋に穴を開ける セレドア・レビット先生を思い出します。 第157回沖縄(7)
美味しいご飯の炊き方 鉄釜の蓋に穴を開ける
沖縄に来ると、自炊をする事があります。ご飯を炊く釜は、鉄釜です。
一般的には、釜の蓋は重い木で作った蓋です。私の場合は、蓋も鉄製です。
ご飯を炊いていると、沸騰が始まり、煮汁が流れだしてしまう事があります。
蓋をあけておかないと、ご飯の旨みである煮汁が流出してしまう事があります。
これでは美味しいご飯は出来ません。
蓋を開けないと沸騰して、煮汁が流れているので、つい蓋を開けてしまいます。
蓋を開けると、今度は温度が下がり、美味しいご飯の味が落ちてしまいます。
ここがジレンマです。蓋を開けるか、煮汁を流してしまうかのジレンマです。
そこで考えたのは、鉄鍋の鉄の蓋にドリルで穴を開けたら、
沸騰した蒸気は多少抜けて、鉄釜の中の気圧が下がるのではないかと予想します。
問題は鉄製の蓋に、どのようにして穴を開けるかです。
家庭用の電気ドリルでは、固い釜には刃が立ちません。
次に、ドリルで開ける穴の大きさです。
マーケティングの有名な事例で、ドリルの話があります。
アメリカのセレドア・レビット先生は、マーケティングの本である、
『マーケティングの発想法』において、次のような例を教えています。
穴を開けたいと思う消費者は、ドリルを買って穴を開けます。
しかし消費者が本当に望んでいる事は、ドリルを開ける機械ではなくて、
ドリルを使って開ける穴そのものです。
つまり、消費者はドリルが欲しいのではなくて、穴が欲しいのです。
しかし穴は売っていません。この話は、マーケティングを考える時、
そもそも消費者が欲しい物は何かという事例です。
ドリルを買いに行くのではなくて、穴を開けてくれる、鉄工所を探しました。
ドリルで穴を開けてもらうように、頼みに行った先は、具志川鉄工です。
具志川鉄工所では、社員の方が何人かいて、
それぞれが目の前の仕事に取り組んでいます。
面識のない具志川鉄工所に飛び込みで入り、
作業に取り組んでいたある一人の方に、鉄釜の蓋を見せて、
「これに穴を開けてもらえませんか?」と、頼んでみました。
突然現れて、本来とは違う仕事を依頼されたら、
今仕事中なので困りますと、断られるかなぁと思いながら、
おそるおそるお願いしてみると、作業員の方は、無言で鉄鍋の蓋を取り、
じっとみつめています。
しばらくして、どのくらいの大きさで、
どのへんに穴を開けたらいいのか、聞き返してきました。
4mm~5mmくらいの穴を、鍋の蓋の端の辺りに開けてもらうと助かりますと、
お願いしました。
穴を開ける機械がある場所に移動して、黙って作業に取りかかります。
工具を選んで、4mmの穴が開く、固い鋼の針に付け替えて位置を定めて、
穴を開ける場所をじっと見ています。
穴を開ける前には、摩擦を軽減させるために、
何か油のような物を塗っていました。
すぐに穴は開きました。
鉄工所の日常的に使われている機械であれば、
穴はすぐに開きました。
おいくらお支払いすればいいでしょうか?とお礼を尋ねると、
作業してくれた方は、代表者の方を指さして、「あの人に聞いてちょうだい」と言います。
言われた代表者の所に行き、頭を下げて、「助かりました。
ありがとうございました。
お礼はいくらお支払いすればいいでしょうか?」と尋ねると、
「いいよ」と言われました。
つまり、穴を開ける作業手間は、要求されませんでした。
4mm程度の小さな穴を開けた蓋は、ガスでご飯を炊いても、
膨張した空気が抜けるので、蓋が外れることもなく、
蓋を開けて、熱膨張を冷ます事もなく、蓋をしたまま、ご飯を炊く事が出来ました。
煮こぼれもないので、熱々ご飯の旨みは、しっかり残っています。
いつ蓋を開けるか、火力をどのくらいにするか、何分くらい火を続けるか、
こんな心配をしないで、熱々の美味しいご飯を炊けるようになりました。
2016年2月1日(月)