神戸ホスピタリティ都市構想シンポジウム 第4回研究会【後半】
ひょうごボランタリープラザ・セミナー室(神戸クリスタルタワー10F)にて。2005年4月18日
兵庫県立大学経営学部の安室憲一教授の次は、兵庫県立西宮病院名誉院長の鵜飼卓先生の「病院医療を取り巻く課題」というテーマでお話がありました。
鵜飼先生は緊急医療援助隊を行っています。これは突然の天災があった時に、とりあえずの現場での救済を目的として医療チームを派遣することです。
1980年代のカンボジアの難民救済から関わったということです。その後、エチオピア、イランの地震などを経験されています。
特に災害地ではテント張りによる診療、あるいは道具の不十分な中での手術となりますから、とてもご苦労されています。
現在ではこの制度に医師700人が登録されているということです。
医療をやっている時に考えさせられることは、みんな一生懸命働いて頑張っているのに、どうして医療経営が不採算なのだろうかと悩むそうです。
アメリカで行われたマネージドケア、保険会社が医療規制を行う、このやり方はもう破綻して失敗しているのではないかと言われています。
日本の医療改革はアメリカを模範として後からついていく考えであれば、これはきっと上手くいかないのではないかと言われます。小泉首相の医療改革はこれでいいのかという提言がありました。
イギリスの場合もサッチャー政権の時にまず医療費の抑制からはじまり、医療費の抑制は医療従事者を削減、そしてそれが医療現場での士気の低下、サービスの低下を招きました。
日本の病院医療の問題について事故、感染、収支、人手不足、新しい技術、不採算、医師・看護士の多忙、安全対策などを挙げられました。
今回の安室先生の提案する「医療に営利を導入する考え方」と鵜飼先生は真っ向から対立されました。このへんについては議論の分かれるところです。
最後に、安室憲一教授のまとめです。
医療をビジネスにしてはならないことについて基本的なことは分かっています。著しい不公平を招くことはタイを見ても分かりました。
しかし、日本の健康制度はGDP(国民総生産)500兆円の中で、すでに国と公共団体による負債は1000兆円を超え、財政危機を招いています。
このような中では将来、消費税を30%まであげないと収支はどうにもならないという予想もあります。このような時に医療の国民の負担をどうするのかという問題に対してはまだ十分な答えができていません。
今日の鵜飼先生のお話では、今まで考えていなかった病院へのテロの問題、病院が狙われる事態に私たちはどうするべきなのか、災害時にはどうするのか、院内感染はどうするのか、公立病院のシステムでこれに対応できるのか、様々な問題点が上げられました。
これを国民が考えなさいよと提言された時に国民は考えることはできるのか、医療ビジネスに対して国民的合意があるのか、タイ・アメリカのようにすることが解決になるとはいえないものの、日本が今の医療制度でよいのか。
さらに医療費に介護費用を加えると36兆円の予算を伴っています。
これから予想される50兆円市場というのは大変な市場であり、問題でもあります。そのために病気にならない仕組み、あるいは病気にならないようにしようとするモチベーションが指摘されます。
兵庫県立大学では60才から始めるベンチャー企業を大学でつくろうとしているようです。
年金に頼らないで、病気にならないように、自分が自分を生かす社会をつくろう、そのようなことを今考えられているようです。
安室憲一教授のまとめとしては、鵜飼先生のお話を聞いて、医療に関して素人が議論することの難しさと恥ずかしさを感じたとおっしゃられました。