日本経済新聞によれば、中小企業への事業継承課税の緩和を検討しているようです。事業承継、税制で集中支援=10年間特例で要件緩和-政府・与党

現状では、事業継承の優遇策を活用をした法人は、年間約500件にしか達していないそうです。

日本経済新聞2017年11月22日朝刊号を手にして、第一面を見ると、中小企業の事業継承について、政府は課税を優遇する枠を拡大する方針のようです。

記事の内容は、経営者の高齢化が進む中小・零細企業の事業承継を支援するため、相続税などの納税猶予を受けられる「事業承継税制」を抜本的に見直し、拡充する方向で調整に入ったそうです。

具体的な対策としては、2018年度からの10年間を特例期間と位置付け、事業承継を集中支援。

税制優遇を受けるための雇用確保要件の緩和などを行うと、報道しています。

現状では、税制優遇を受けるには、事業を引き継いだ後の5年間は平均8割の雇用を維持するなどの条件を満たす必要があります。

しかし実際に事業継承の優遇策を活用をした法人は、年間約500件にしか達していないそうです。

その背景には、経営者の高齢化があります。

経営者が長年かけて会社を成長させると、上手くいけばいくほど、自社株の評価は高くなります。

経営者が次世代に会社を託する場合、多くは身内か、同族です。

社員の中から次の経営者を選抜する方法もあります。

いずれの方法でも、経営権を安定させるためには、発行株の三分の二以上を持っていた方が、安定した経営が出来ます。

ここに問題があります。

次の経営者は、生前贈与で株式の贈与を受けた場合、およそ評価額の半分以上の課税がかかります。

税金は全て現金です。

税金を払うために、譲り受けた株を売ると、経営支配権に問題が起きてきます。

そこで、銀行借り入れをして、借金をしてまで税金を払い、株式を譲り受ける為に納税することになります。

これでは、次の経営者は大変な負担になります。

経営者が亡くなって、相続する場合には、相続税が課せられます。

日本の企業は、99%が中小企業です。

中小企業のオーナーは高齢者が多く、近い内に経営者の交代が予測出来ます。

これから集中して事業継承の問題が起きてきます。

経営を引き継いでくれる人がいれば良い方で、後継者のいない企業も沢山あります。

この場合は、最悪、会社を解散せざるを得なくなります。

そこで、会社を継いでくれる企業に、事業を売却する方法があります。

それがM&Aです。

こうなると、事業継承は『すでに起きた未来の問題』です。

そこで政府も、事業継承をしやすくする為、課税を緩めようとしています。

課税を緩めるための条件は、それはそれで厳しい面もあります。

例えば、譲り受けた時の従業員数を80%以内までに維持して、減少させてはいけない事になっています。

最近、人材不足が起きて、退職者の穴埋めが出来ない雇用情勢が続いています。

人材を募集しても、応募が少なく、採用まで至らない場合もあります。

政府の税制調査会では、現実に起きている中小企業の事業継承について、事業継承ができなければ、会社の解散か、廃業に成らざるを得ない状況を緩和する為に、事業継承の条件をさらに緩和しようという意見に傾いているようです。

同じ日に野村證券から事業継承についてのセミナーの案内が届きました。

このセミナーは、M&Aを活用して、事業の継承と、後継者問題を解決できるという、具体的な提案をするようです。

講師は、株式会社日本M&Aセンター代表取締役社長、三宅卓氏です。

65歳以上の高齢者が、日本の人口の4分の1を占めるような人口構成になって来ると、事業継承の問題は、日本中の問題になってきています。

事業継承が上手くいかなくて、多くの事業の廃業や解散が起きると、日本にとっては、まさに国難です。

2017年11月22日(水)