旧正月を終えて、丹波の黒豆を炊くーーゆとりある時間との向き合い方
投稿No:10557
旧正月を終えて丹波の黒豆を炊くーーゆとりある時間との向き合い方

旧正月を終えて丹波の黒豆を炊く

ーーゆとりある時間との向き合い方
実は、私は黒豆の煮物があまり得意ではありません。
匂いも少し苦手です。
ところが、奥さんは大の黒豆好き。
私に気を遣って、
今年はこっそり黒豆を炊いていたようです。

簡易コンロを使い、アルミの温室の中で、
じっくりと時間をかけて。
黒豆を炊くのは、本当に手間のかかる料理です。
一晩水に浸し、火加減を見ながら、
ふっくらと艶が出るまで待つ。
急ぐことのできない「時間の料理」です。

奥さんの目的はシンプルです。
自分が好きだから作ること。
そして、身近な人におすそ分けをして、
一緒に味わうこと。

ところがこれが、予想以上の人気。
「今年はまだ?」と、
密かに楽しみにしている人が増えているようです。
「旧正月」春節とは

アジアの広い地域では旧暦を使用しており、
2026年は2月17日が始まりです。
近くの神戸中華街でも、
春節を祝う雰囲気が漂っています。
1月1日の「正月」とは少し違う、
どこか穏やかで、それでいて身の引き締まるような空気。
日本のお正月ではおせち料理として黒豆を食べます。

黒豆は、「日本の正月」を感じさせてくれる存在です。
ただ、昨年は少し勝手が違いました。
12月の早い時期から沖縄へ行くことになり、
年末は準備に追われてバタバタ。
例年のようなおせちの準備ができませんでした。
ところが年が明け、旧正月が近づいた頃、
食卓につやつやと黒く輝く黒豆が並んでいました。
それは、黒豆を炊くのが好きな妻が、
改めて時間をかけて作ったものでした。

「お正月に間に合わなかったからといって、
食べないわけにはいかない」
そんな静かな意気込みを感じました。
豆は丹波産の黒豆。
昨年のお正月明けに、
お安くなっていたものを購入し、
少し残しておいたものを炊いたようです。
妻のやりくりは、なかなか見事です。
「煮る」と「炊く」

関東では「煮豆」といいますが、
関西では「炊く」という表現を使います。
同じ料理でも、言葉が違うのは面白いものです。
「炊く」と使われる食材には共通点があります。

穀類や豆類、大根や芋類など。
水分を含ませ、時間をかけて、
芯までふっくら仕上げる――
そんな「待つ料理」に、この言葉は使われます。
関西で「炊いといたで」と言われると、
そこには作業以上の気持ちが含まれているように感じます。
関東では「煮物」、
関西では「炊いたん」。
どちらも同じはずなのに、
「炊いたん」の方がどこかやわらかく、
美味しそうに聞こえるのは、
私が西の人間だからでしょうか。

効率やスピードが求められる時代ですが、
「炊く」という言葉には、関東炊きのように
急がず、素材の変化を待つ姿勢がにじんでいます。
旧正月という少し落ち着いた節目に、
手間のかかる料理に向き合う。
年明けの黒豆は、
今年も焦らず、一つひとつ大切に進めていこう――
そんな静かなメッセージを、
そっと届けてくれた気がしました。
