沖縄海洋博公園の近くに備瀬という静かな集落があり、そこには防風林としてフクの樹を植えています。
フクの樹はフィリピンが原産地と言われています。風が強い地域ではまっすぐに上に伸び、枝を広く張る風避けのための防風林としてフクの樹を植えるそうです。石垣島や宮古島、西表島などの昔風の沖縄が残っている集落では今でもよく見られます。
備瀬のフク木並木は一歩集落の中に入ると少し日陰の涼しい風が吹き、真夏の沖縄の暑さを忘れさせてくれます。道幅は車が通るには難しいぐらい細く、これがかえって車の進入を防ぎ歩道専用のような落ち着きを出します。
並木に囲まれた各区画には、台風のために漆喰で固めた屋根瓦の沖縄風の木造のおうちが残っています。日が当たる所にはバナナの木やパパイヤの木がところどころに見られます。
この落ち着いた古き沖縄の雰囲気を慕う人気が観光客に広がり、今では水牛に観覧車を引かせ、村を一周する観光資源になっています。水牛もあまりに暑い時はやる気がなくなり、8月の暑中はお休みをしていました。
林の中を歩いていて家の中から人声や音楽の音が聞こえてくると、思わず聞き耳をたてたくなります。
しかし、話している言葉は意味がわかりません。もし、リクエストできるなら流れる音楽は琉球三味線の爪弾きで何か物憂げな恋の物語などの曲がいいのではないかと思いました。
同じような路がグルグルと続いているので、気をつけないと道に迷って同じところをグルグルと回ってしまうこともあります。しかし、損をした気持ちにはなりません。目的があって歩くのではなく、本当にこの沖縄の雰囲気を楽しんでいる逍遥なのですから。