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お盆休みの沖縄 その6「3日目:沖縄ムーンビーチ沖の追い込み漁【水中編】」
幼いとき、川で魚を捕って夢中になって遊んだ夏の日の思い出があります。川で魚を捕るときには、石を堤防のように積み上げて、魚の逃げ道を塞ぎ、一箇所逃げ口を作り、そこに網を張って魚を遠くから追い込んでいきます。
このときは、水の深さはほとんど膝より下で、水の中を潜って捕るほどの深いところではありませんでした。
うまくいくと、鮎や鮒、鰻などが捕れ、子供同士でも何か収穫の喜びを感じました。
何十年ぶりの追い込み漁です。
子供のときの魚の捕り方と違って、今度は大きな海に出てゆき、深い水深の中で網を張り、獲物も大きな魚を狙います。
気持ちはもうすっかり漁師です。
漁船に乗り、エンジンを力いっぱいふかして、沖へ突っ走ると、船は風を切って飛ぶように波を掻き分けて進みます。
後ろには、白い波の軌跡が残り、どれだけ船が速く進んでいるかが、見た目にわかります。
大きな波のうねりを、船がジェットのように乗り越えてゆくと、着地したときには船は尾てい骨を打つほどに振動が伝って、私の焦る気持ちを代弁してくれているようです。
漁場を探し、船を止め、錨をうつと、簡単な打ち合わせのあと、網を張っていきます。朝日会のメンバーの人たちには、多くの言葉は要りません。
そばで見ていると、あうんの呼吸のようにうなずきながら、網を張る位置が決まっていきます。
勢子の役は、3人のメンバーが、海底から拾った石を網に向かって投げ込んでみたり、泳ぎながら水面を両手で叩いてみたり、魚を網の方向に向かって追い込んでいきます。
網の底には、隙間を埋める小石を並べて、魚を逃がさないように、退路を断っていきます。
ふと、岩目の隙間を見れば、ハリセンボンが愛嬌のある顔をこちらに向けて、じっと見ています。
フグのかわいらしさは、近づいて覗いて見ると、びっくりしたような大きな目で、私を刮目しています。
しっぽを振りながら、愛嬌を言っているかわいい仔犬のようです。
追い込み漁は、うまくいくと一つの魚の群れを一挙に網に追い込むことができます。
毎日、毎日、船を出して多くの人が魚を捕っていても、どうしてこんなにまだ魚はいるのでしょうか。
昔を知っている人は、すっかり魚は少なく、小さくなったと言っています。
網にかかった魚は、突然身動きできなくなって、何がなにやらわからないまま暴れています。
深く注意して見ていると、テングダイの仲間のような魚が、網を見ると引き返して、うまく逃げていきました。
猪突猛進するタイプの魚は、後ろに下がることがありません。
そこで、網にからまってしまい、逃げられなくなってしまいます。
追い込みが終わると、網を少しずつ丸くまとめて、巻くようにすぼめていきます。
この時にも、うまく脱出する魚がでます。ここで捕まるか、運良く逃げ切るか、一瞬の判断で、魚の運命は別れることになります。もちろん、逃げられないように、うまく巻き込むのも捕る方の腕前です。
網を巻いて、そっと船に引き上げると、今度は網にかかった魚を、網を破らないように取りほぐしていきます。
何でもないように見えても、魚には毒を持ったトゲが体についていて、下手をするとこのトゲに刺されてしまいます。
もし、毒をもったオコゼや、鋭いトゲを持ったハギの仲間などに、油断して刺されてしまうと、口が利けないほど苦しい痛みがあります。
珍しい魚も上がりました。これは、海水魚店にいけば、かなり高い値段で売られています。
網からほぐすときに、この魚は海に逃がしてあげました。
船から海水に放り投げられたこの魚は、すぐに海の底のほうに逃げ込んで、見えなくなりました。きっと仲間に出会ったら、うまく逃げられたことを話していると思います。
周りには漁船もあれば、ホテルが出している観光船もあります。のんびりと夏の日の1日を楽しんでいる船です。
周りを走る船は、顔見知りの船長さんのようで、すれ違うたびにこちらからは冨着船長が声をかけ、手を振っています。
そうすると、向こうからも何か大きな声で返事があります。
恩納漁港が近づいてくると、ムーンビーチの白い浜辺と、ホテルの高い建物が目印になります。
たくさんの魚が捕れると、これを早くみんなに見せたいと思う気持ちが高まるのか、不思議に船足は速く感じます。
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