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松葉博雄の沖縄研究室

1996年沖縄にて 台風の目: Part1 

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 〜 恩納村を通過

 

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1996年8月11日、伊丹から飛び立った沖縄バカンス便は、うきうきする私と娘を中心に、娘の友人の文(あや)さんとメーカーの担当者であるTさんの4人で那覇に着きました。

台風が接近中との天気予報を受けながらも既に予定を立てていたバカンス便なので、中止することも惜しく、やや不安を抱きながらの決行でした。

8月になって堺市ではO-157食中毒事件が発生し、法定伝染病に指定されたので、食べるものには注意をするようにと家族からの心得を頂いています。沖縄に来れば、何でもかんでもおいしいものばかりですが、生物には気をつけて、危なさそうな不衛生な店では食べないようにとのお達しをうけました。

着いた日はオリオンビールを飲みながらも、「まずは飛行機が飛んで良かった良かった。」と祝杯をあげました。(写真)

沖縄のホテルに届けられた歓迎の花束を前にオリオンビールが並び、明日からめちゃくちゃ楽しく遊ぼうという話が弾みました。

ゴルフに行こうか、ドライブか、はたまた離島に熱帯魚を見に行こうかと、着いた日が一番ゆとりがある楽しい時間でした。

翌日、8月12日、発達した台風12号は暴風雨を伴い、沖縄地方に接近しています。 後から分かったことですが、鹿児島では最大瞬間風速は58.5m/sにまで強い風を記録したようでした。

沖縄近海で発生した台風12号は暖かい南の海水から十分な蒸発した水分をエネルギー源とし、これから沖縄に向かって勢力を温存したまま日本本土に向かってどんどん進んでいます。

見ていると雨はいよいよ激しく、風は風速40mを超え、椰子の木は風に曲がり、外を歩くこともできない暴風雨がここ恩納村にも吹き荒れています。

せっかくのバカンスは台風が主役となり、台風のエネルギーが収まるか、あるいはコースが逸れてどこかに行ってしまうかしかバカンスを楽しむことはできません。ホテルの部屋でテレビの台風関連ニュースをヤキモキしながら見ていました。

神戸にいれば沖縄の台風は他人事ですが、沖縄にいると沖縄の台風は重大な関心ごとになります。

朝から叩きつけるように強い風と激しい雨がこの恩納村に吹き付けていましたが、8月12日お昼ごろ、台風の風雨はぴたりと止まり、突然晴れ間が覗きました。

これまでどんよりと低く雨雲が垂れ込めていた時に、風は止み、厚い雲の流れは少しずつ穏やかになり、そしてほんのわずかながら青空が覗いたのです。

噂に聞いた「台風の目」とはこのことだったのです。

地上遥か15階建ての大きなマンションが台風の暴風雨にビルが横に揺れたのです。台風の時はビルは右左と軋むように揺れるのです。

神戸の大震災の時は直下型でしたから上下に揺れました。どちらが怖いかといえば、それは上下に揺れるほうが格段に怖いです。

大きなホテルを左右にみしみしと揺れ動かす力を目の当たりに見れば、風の力とはこれほど強いものかと驚きました。

吹き込む風雨はわずかな窓の隙間でも、容赦なく強い風圧を吹き付けてきます。

挟まれて指が飛んだら、足がちぎれたら、と思うほど、恐ろしいほどの力でたたきつけてきます。

台風の目が通り過ぎると、風向きは一転して変わります。

そして時間とともに、みるみるうちに天気は回復し、先ほどまでの風雨は嘘のように静まっていきます。

先ほどまで見えなかった恩納漁港の辺りは、少しずつ天気が回復して景色が見えてきました。