こちらのページは新しい松葉博雄のブロ
グページに移動
します。
移動しない場合はこちらから
投稿:東西南北
2000年の夏の出来事を投稿したSです。今回は、神戸の街の住みやすさについて考えたことを書きます。
僕はこれまでに、父の仕事の都合や自分の進学・就職などで、いろいろなところに住んできました。
一番長いのは実家のある静岡県です。Jリーグの鹿島アントラーズで知られる茨城県鹿嶋市をはじめ、茨城県つくば市、東京都八王子市にそれぞれ5〜6年ほど住んだこともあります。そして今、神戸に住んでいます。
そのなかで、神戸に住んでいる人には、他の町に住んでいる人にはない特徴があります。
それは、方位感覚です。「方向」ではありません。「方位」です。
例えば、僕の体験ですが、こんなことがありました。
神戸に引っ越してきたばかりの僕は道の名前を知りません。鯉川筋においしいコーヒーを飲ませてくれるお店があるという情報を得ても、その「鯉川筋」がわかりません。市役所のあたりをウロウロと困り果てて、近くの親切そうな人に「鯉川筋はどこですか?」と道を尋ねました。
すると、「大丸の西側を南北に走る道がそうですよ」と教えてくれました。
大丸は目立ちますからすぐにたどり着きました。この時間(夕方)で陽があっちに傾いているということは、あちらが西か、とすぐに鯉川筋が理解できました。
しばらく暮らしているうちに「山が北」と自然に頭に入り、なるほどこれは便利だと思ったものです。
この社長研究室でも神戸を紹介するページで、「その少し東の方向には交通センタービルがあり…」といったように、方位に基づいてものの位置を記述している箇所があります。
車を運転していても、電光掲示板の渋滞情報は『○○交差点西行1km渋滞』などと表示されます。「上り・下り」表記よりわかりやすいので、なるほどこれも便利だと思いました。
ものの位置を示すのに、これほど「東西南北」が使われている町を、僕は他に知りません。
海と山に挟まれて東西に街が広がる神戸ならではの特徴だと言えると思います。
さて、僕は以前に測量の会社に勤めたことがあり、地図を見るのがわりと好きです。
そこで、国土地理院が発行している地図の神戸付近を見てみました。下の図がそうです。この地図を見て、ハッとしました。
JRの線路を赤くなぞってみました。
僕が何にハッとしたか、おわかりでしょうか。
そう、JRはぜんぜん東西には走っていません。東西方向に対して45度ほど傾いています。三宮から「東」に伸びていると思っている線路は、地図の正しい方位では「北東」へ進んでいます。
しかし、ヒトは便宜上、神戸から大阪へ向かう電車は「東西」に走っていると認識しています。このように認識すると、自分の生活が便利になり、他人とのコミュニケーションがとても円滑になるからです。
このように実際の方位を都合のいいように認識している事例はいくつか研究されています。
例えば、東京の山手線。某カメラ店の「まーるい緑の山手線♪」という歌にあるように、外周は円形に近い形をしていると思われがちですが、実際には南北にかなり細長い形になっています。ですが、東京で暮らしていても「山手線は丸い」と認識している人は相当います。
これも、「丸い」と考えたほうがわかりやすいし便利だからです。
方位磁石を使って厳密に見ると「東西」ではないところを、人間は生活のためやコミュニケーションのために、自分たちなりの「方位」を集団で共有できるようです。このようにして、お店や施設の位置、道路の方向などをわかりやすく共有し、「住みやすい」街を作っているのです。
神戸の街の住みやすさの原因の一つは、この「方位感覚を共有していること」ではないでしょうか。
|