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[揖保川の落ち鮎]

 毎年秋も深まってくると落ち鮎の時期となってきます。鮎の一生は短く、若鮎と言われたピチピチ鮎も秋には産卵を終えるとその一生を閉じてしまいます。
 中には翌年まで生き延びる鮎もいるそうですが、ほとんどが秋になると産卵を終えて川の流れに身を任せ、川下に落ちて行きます。

揖保川の「正起」に落ち鮎をいただきに行って来ました。

 今年は台風がよく来たので、川の増水がお店の床近くまであり、一時は流されるのかと心配したそうです。その証拠に、お店の前の川床に繁っていた樹がなぎ倒され、水位は樹のてっぺんにまで及んでいたことがわかります。大変な増水だったことが想像できます。

 洪水は鮎を押し流し、沢山いた鮎も川下や瀬戸内海にまで流されてしまったようでした。台風のあと2回鮎を放流し鮎資源の回復を待ったそうです。

2004年6月、撮影
2004年10月、撮影

お店の生簀にいる鮎は夏に比べるとかなり大きく太ってきています。

すでに生簀で一生を終えた落ち鮎は生簀の中に浮いて、お腹を見せていました。

 いつもの鮎の塩焼きがメインの鮎定食をいただきました。苔を食べて育った鮎の胃袋からは草の香りが舌に広がります。落ち鮎は型は大きくなりますが、食感はややふぬけた感じで大味となっています。どちらかといえば冷凍品を解凍したような感じでした。


 夏に来た時の川の感じがすっかり洪水によって変わっているのを感じました。大きな岩も水の勢いで転がるように流れるようです。

 気がついたことは水鳥がこのあたりに増えたように思えました。形の大きいゴイサギや白さが目立つシラサギが飛びかっていることで気がつきました。

 ゴイサギは川に降り、じっと川の魚を狙い続け10分でも20分でも同じ姿勢で微動もしないで、獲物の小魚が油断した瞬間にサっとくわえて一瞬の間に漁を終えています。

 先ほどまで生きていた小魚は、自分の身に何が起きたかわからないまま、きっと命を絶ったのではないかと思えます。

 これが自然界の理であるとは言いながら、目の前でゴイサギが小魚をくわえて飛び去って行くのを見ると、つい考えこんでしまいました。

 吉田兼好の「徒然草」に「飛鳥川の淵瀬常ならぬ世にしあれば・・・」というように、全ての事象は移り変わりいつまでも変わらないものはないという事を思い起しました。
 今日の鮎がきっと今年の天然鮎の最後の鮎と思いながら、よく肥えた鮎をいただきました。また来年も初夏にここ揖保川の「正起」に来たいと思います。

 ここの若夫婦のご主人とお女将さんとは顔なじみになって、ここのお店をホームページで紹介していることをお伝えすると、大変喜ばれました。

 冬になると山崎町では猪のぼたん鍋が鮎の代わりになります。まだ正起でぼたん鍋をいただいたことがありませんが、機会があれば訪れたいと思いつつ帰りました。

 帰り、山崎インターの近くの「しそうふれあい市場 旬彩蔵」に寄ってみると、シメジや松茸はあるわ、柿 はあるわ、枝豆はあるわで秋の食材が溢れ、切花も、色とりどりの菊 が並べられていました。


ビルの街中で暮していると、自然に囲まれた山崎町の落ち着きと緑豊かな山河に心のやすらぎを感じました。