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松葉博雄の沖縄研究室

 

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1996年沖縄にて 台風の目:Part3〜 台風一過 久高島へ〜

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台風12号もだんたんと風と雨が収まり、待ちきれない気持ちで海へと繰り出していきました。今回の海は久高島です。

車で知念半島まで行き、安座真港から高速船でおよそ15分で久高島に到着します。台風の直後なので波の引きは強く、大きな波が珊瑚のリーフから浜に向かって押し寄せて、強く引き去っていきます。

この引き潮に引きずりこまれると、少々の泳ぎの達者な人でも自然の力には勝てません。本来は娘を連れた親のすることではないのですが、親のほうが海に行きたくて、引き潮の危険にもかえりみず海に入っていくことになりました。

念のために特大の浮き袋を用意し、空気をいっぱい入れ、さらにロープを巻きつけ、その端を腰に巻き、決して浮き袋と体が離れないように固い絆を結んで海へ入っていきました。

もし、救助を求めるときに分かりやすいように少し派手めのTシャツを着て、救助隊の目を引きやすいようにあらかじめ着る服まで考えて選んでおきました。

波は高く、波の引く力は強そうです。この波にさらわれて沖に引きこまれたら、哀れ松葉博雄の一生も一巻の終わりとなります。

波の静かなところを探し求めて、浜辺をあちらこちらと歩きました。久高島の浜辺にある石は特徴があります。強い波で珊瑚が洗われ、角がとれ、丸くなりまるで鶏の卵か、駝鳥の卵か、大きいのだとゴジラの卵のように長方形の丸い形をしています。

この島は、天然記念物が多く、島から持ち出しを禁止されている動物・植物などの生物や、石や珊瑚などの採取が制限されています。

波の静かな、あまりヒト気のないビーチに行き、水中カメラを持って海に潜ってみました。

台風の後でしたが、透明度はやや落ち着いて、写真が写せるぐらいに澄んでいました。海に入ると、波の表面が天井のように見え、地上とは感じが変わってきます。

波の天井からは太陽の明るい日差しが珊瑚に差し込み、たくさんの小魚はさんご礁の隙間に群れ住んでいます。この小魚を狙って中型の魚が集まり、その中型を狙って、大型の魚が集まってきます。

ちょうど引き潮にあたり、かなり潮位は下がり、普段潜らなければ見えないあたりまでが簡単に珊瑚の生態を覗くことができました。

日が当たると、砂地の底は天井の波の模様をスクリーンに投影するように波模様がつきます。

そこに、銀鱗の魚の群れがゆっくりと通り過ぎていきます。スクリーンに映った魚は一瞬の間に消え去って、今見た魚はスクリーンのわずか一シーンのように鮮明な映像を残していきました。



時の経つのを忘れ、魚を追い、珊瑚礁の美しさに魅入られてすごしました。いつの間にか魚を求めて進んでいるうちに、外洋とさんご礁の境目を作るリーフにたどり着きました。

ここは、少し小高くなっていて引き潮のときは、陸のように姿を現します。潮が満ちてくればリーフは波の下に沈み、リーフを通る白波だけがリーフのあることを教えてくれます。今日は引き潮だったので、運良くリーフに上陸することができました。

ここから見る景色は、外洋は深い紺碧の海で、水平線は空の青さと溶け合い、海と空の境すらわからない青さです。

陸側を見れば、小高い丘には亜熱帯の樹木が生い茂り、海岸線は白い珊瑚砂に覆われ、空には綿のような雲が覆っています。

珊瑚礁の内側にいる間は比較的浅い海なので危険性は少ないですが、ここから先は外洋なので深くサメもいれば危険な海域になります。

満潮時には珊瑚礁の外側は波に飲まれて消えていますが、潮が引くとリーフの上を歩くこともできます。

波の音はゴーッと大きく、それ以外の音は何も聞こえません。

しばらく自然のすばらしさに見惚れ、外洋を見ているうちに、段々と潮が変わり、今度は満ち潮に向かっていました。

陸地に向かってシュノーケリングをしながら戻ることにしました。



戻る途中できれいな珊瑚の群れや、美しい魚の群れに出会いました。

よく見てください。保護色でわかりにくいですが魚の群れです。


コバルトスズメの群れは、太陽の日差しがあたる場合と陰っている場合で大きく違います。

美しいコバルトスズメは瑠璃色でルリスズメとも呼ばれています。これはかなり太陽光線がよく当たっている場合です。

海に入ると、おもちゃ屋さんに入った子供のようにあちらもこちらも見て歩いているうちにすっかり時間は経過し、いつのまにか強い日差しは西に傾く西日になっていました。

もう少し、あちらの珊瑚までと区切りもつかず、ずーっと遊んでいるうちに本当に陸に上がって帰る仕度をしなければ、ここは久高島で、宿に帰るには船の出航時間があることを思い出しました。一応、ここらあたりで久高島のビーチからのレポートを終わります。