丹波篠山山南町「茶寮 ひさご(さりょう ひさご)」のスッポン鍋には、スッポンのエキスを使った「力味噌」が使われています。

スッポンのエキスで作った力味噌は、乾燥させて携帯食に使えば、力味噌だけでおかずになります。 天高く馬肥ゆる秋 丹波篠山に美味しいものを求めて(3)

スッポン鍋は、グズグズ煮たってきました。

しかし、リッキー君がじっとしていなくて、落ち着いてスッポン鍋を食べるわけにはいかなくなりました。

こうなると交代でリッキー君を部屋の外に連れ出して、外の景色を見せて、何かご機嫌をとるしかありません。

そこで、鍋をつつく人は減るばかりです。

3人前のスッポン鍋を通して食べたのは松葉博雄だけで、他の2人は代わり代わりリッキー君のご機嫌取りに回って、ゆっくりとスッポン鍋を食べられていませんでした。

実にもったいないことです。

幼い子のエネルギーには感心します。じっとしている事はありません。

床の間に上がって踊ってみたり、小さな窓の障子を開けたり、閉めたり、ひさごの女将さんが気を利かせて持って来てくれたおもちゃ箱を開けて、ひっくり返してみたり、じっとしていません。

床の間の隣にある、棚に飾ってある赤絵の皿を、リッキー君がひっくり返さないか心配です。

山南町は寒いところで、10月に入るともう部屋には石油ファンヒーターが置かれています。

少し暖房をしつつ、スッポン鍋を頂いている内に、部屋はすっかり温もって、暑くなってきました。

スッポン鍋を食べ続けているとお腹が張ってきたので、お手洗いに中座する途中、以前に来た時確か中庭が見える部屋があったはずと、ちょっと別の部屋のふすまを開けてみると、ありました。

そうです、そうです、この景色です。

この景色を見ながらスッポン鍋を頂いた事もありました。

スッポン鍋の仕上げは雑炊です。

今の部屋で雑炊を作るのかと思っていたら、調理場で雑炊を作ってきて、出来た鍋を運んでおられました。

少し女将さんとお話です。インターネット検索でひさごを検索すると、松葉博雄の社長研究室で紹介した記事が、1ページの始めに出るんですよと、女将さんにお話しました。

女将さんは、私、インターネットで自分の店の評判を見るのが怖いんです。もし悪い事が書かれていると、その後気になって気になって・・・、と思うと、見ない方がいいのかなぁと思って、見ていないんです。

と仰っていました。

では少し、気の軽い話をしましょう。

この味噌はなんですか?それは、力味噌です。昔、旅に出る時は、力味噌を乾燥させて携帯し、もし食べるものが無い時や、ご飯だけの時は、この力味噌を舐め舐めして携帯食にしたそうです。

そんなに重宝な力のつく味噌なんです。

では、その味噌を傷口に塗ったら、傷はすぐに塞いで治りますね?と、話を投げかけると、女将さんは絶句して、しばらくして、こんな場合にちゃんと話を切り返したらいいんでしょうねと言われました。

もう一度女将さんが部屋に入ってきた時、また軽口です。

雑炊を食べるときにこの海苔を使って下さいと、細い刻み海苔を用意してくれました。

この刻み海苔は、お客さんが帰った後、家族皆で夜なべしながら海苔を細く細く切るんでしょうね、と問いかけると、今度はストライクが出ました。

そうなんです、はさみでのりを細かく切っていると、お陰で肩がこってこって・・・と、満面の笑みで答えてくれました。

跡継ぎはいらっしゃるんですか?うちには3人の男の子がいるんですが、上の2人は大学に行っていて、戻ってくるかどうか、下の子は高校生で、これからです、と聞いて、男の子が3人もいれば大丈夫と思いますとお伝えしました。

リッキー君が退屈しないように、おもちゃを2つプレゼントしてくれました。小さなおもちゃですが、クワガタは動きます。

マリオも走ります。リッキー君は大喜びです。

お勘定の時に、すっぽん漢方飴をお土産に一缶プレゼントしてくれました。これも、女将さんの心遣いです。

お料理と飲み物の合計は、3人分でサービス料込みの4万3千円です。

玄関の廊下には、この地方の独特の土人形が飾られています。

玄関を出ると、すぐ出口に丸い丸い菊の植木が、夏の夜空に咲いた花火のように、沢山の蕾を持って、これから咲こうとしています。

女将さんに、今度もホームページで紹介しておきますね、とお話しすると、力味噌の事は無かったことにして下さいね、と笑って手を振って、見送ってくれました。

「茶寮 ひさご(さりょう ひさご)」

兵庫県丹波市山南町和田132-1
TEL:0795-76-0089
URL:http://www.h5.dion.ne.jp/~hisago/

2012年10月14日(日)