神戸ホスピタリティ都市構想シンポジウム 第6回研究会(最終回)

ひょうごボランタリープラザ・セミナー室(神戸クリスタルタワー10F)にて神戸ホスピタリティ都市構想シンポジウムの第6回研究会(最終回)が行われました。今回は、「クラスター戦略としての「神戸ホスピタリティ都市構想」の意義」 について、兵庫県立大学経営学部講師の西井進剛先生から発表がありました。

医療産業都市都市構想のように、1つのテーマで企業や教育機関を集積させるまちづくりは、過去に筑波研究学園都市などで行われてきました。果たしてこの「クラスター化」という戦略の中で、神戸の医療産業都市構想にどのような問題点があるのか、わかりやすく解説していただきました。

 


 

次に、「ホスピタリティ都市が実現すべき要素と神戸経済の活性化」 について、神戸ファッション造形大学教授の前川知史先生からの発表がありました。


 

今回は、神戸ホスピタリティ都市構想シンポジウム研究会の最後なので、これまでの発表を受けて、コーディネーターの安室憲一教授からまとめがありました。

 

今回の研究会の発想の原点は、10年前の神戸の震災の折、市民の皆さんの助け合いから始まりました。このことから、神戸をどのようにするかという気持ちに皆さんがなってきました。震災により、神戸の市民の共感の場というものが形成されたことになります。日本は、これまで工業都市を作ってきたわけですが、今、都市というものの位置づけを考え直す時期にきています。

港を埋め立てて作った臨海部の工業地帯が、今では衰退してきています。これは脱工業化時代を意味しています。一方、ITのインテリジェントビルは21世紀の工場のスタイルを象徴しています。これからの未来を予言しています。これまでの工場のスタイルは、衰退していきます。

箱物中心の神戸の復興から、心のケアを中心とした復興へ考えが集まってきています。私たちのクラスターが出来てきています。それは志のネットワークという形になっています。行政と市民とが夢を語る場が芽生えてきています。神戸ホスピタリティ都市構想はホームページでもその内容について発信しています。産学官ではない、市民から生まれた志のネットワークということになります。

この研究会で学んだことは5つあります。一番目は、ホスピタリティの意味です。

イギリスに行くと、観光について否定的な意見があります。それは観光施設を作ると環境破壊をしてしまうことに原因があるからです。

例えばホテルを建てる。そうすると当然汚水が流れる、あるいは周りのこれまでの自然を壊して建物を造るということにもなります。さらにリゾートに来るお客様は、金持ちのわがままを通すこともあります。

したがって観光というものはネガティブは考えであり、土地の人からは来てほしくないという気持ちがあったかもしれません。

これまでの観光と市民との関係は、このように溝があったかもしれません。しかしこれからの観光は、ゲストと地域住民との軋轢があってはならないことになります。満足度の高い地域住民が、お客を迎えるホスピタリティが必要になってきます。

これは、サービス論で言われる従業員満足と顧客満足の関係に似ています。つまり、神戸に住んでいる市民が、神戸に住むことに満足していなければ、外から来る人に対して、来ることが嬉しいという状況にならないことです。

そのためにホスピタリティという気持ちが必要です。神戸にはこの考えを受け入れる素地が出来ています。それは神戸独特のライフスタイルがあるからです。

国際都市という性格があるからです。もちろん震災を経験したこともあります。全国からボランティアの方が来ていただきました。それに対する感謝の気持ちも沢山経験しました。

 

第二番目は、弱者・高齢者にとってのQuality of Lifeについての考え方です。

これはノーマライゼーションで説明がありました。尊厳のある人生を送るには、私を知ってくれる人がいるということです。

その人の経歴を知っている人が回りに居ることがホスピタリティの基礎となります。

理念に裏付けられた施設介護をされるということです。痒いところに手が届くようなサービスが受けられるということです。そのためには建築構造自体から考え直さないといけないことになります。

 

三番目は最も難しいことですが、日本の医療制度の今後の展開についての問題です。

この問題については、非常に難しく、一通りの答えが出るわけではありません。

例えば医療特区を申請してみる考えもあります。株式会社形式の病院を造ることがいいかどうか、現在のところ認められていません。

ところが、海外のタイの事例では成功しています。それは、資金を外部から導入することによって高額医療機器を購入できるからです。そして日本からでさえ、良質の腕のいい医師が集められています。

株式会社になった病院は資金を集めることによって日本の公立病院では70%が赤字であるという状態にもかかわらず、利益を出すことができています。

株式会社として利益を出すことが悪であるかどうかは、もう一度考えてみる必要があります。それは社会の資源を使ってその資源の利用効果によって利益が出るのであれば決して悪ではないことになります。むしろ資源を使って効率のよい運営ができない方が悪であるともいえます。

医療関係者の働き過ぎが指摘されています。医療関係者の多くの方は非常に一生懸命働いているのにもかかわらず、長い時間待たされるというサービスの悪さを指摘されています。そこにはシステムの悪さがあげられます。

例えば電子カルテにすれば早く作れる。あるいは医療従事者はその専業業務さえしておればいいとことをすればいいのですが、そのためには医療のマネージメントシステムを作っていかなければなりません。

一つの事例として、現在小児病棟の医師が不足しています。その根底には小規模病院の乱立で、医師が不足しています。

もう一つ、未承認医薬の保健適応、つまり混合医療が認められていません。そのために一つの未承認医薬を使うことによって大変多くの医療請求を受けることになってしまうこともあります。治療から健康と予防医薬にさらに進めていく必要があります。

第4番目は家庭内のホスピタリティを社会のホスピタリティへ開放するという考え方を学びました。

第5番目は、神戸は先端医療の成果が少しずつ出始めていることです。

これをランドマークとすることになります。神戸らしさというものをここに出していきます。

長期滞在型多くの外国でサービスをすること、そしてアジア最大の高度な医療地域を作ること、これが新しい神戸に求められるホスピタリティー産業のコンセプトとなります。

これが上手くいけば神戸の長期的な優位性を持続できます。

中国もインドも今新しい産業を伸ばしていますが、そのうちそれぞれの国にはいつか高齢化社会がやってきます。

日本はすでに彼らよりも早く高齢化社会を迎えて、それに対応しようとしています。これは、中国、インドがその高齢化社会に入った時には、日本がそれを受け入れる形に出来るチャンスともいえます。高度専門的雇用効果が見込められます。

神戸空港は、地方と地方を結ぶ路線というものが世界でも成功している例があるように、これから夜間バスのように都市と都市を結び、そして都市と首都を結ぶのではない、運営方法によって繁栄することも考えられます。もちろん緊急患者の受け入れということも国際的に出来ます。

このようなことを考えると、これからの神戸ホスピタリティ都市構想というものは、大きな課題に向かって進んでいることがわかります。

2005年6月20日(月)