インド巡礼記:カルカッタ編 その7~パトナへ向かう列車の中で~ 第11話

インド巡礼記:真理を求めて インドに、インドに真理を求めて、インド巡礼に行きたい、こう思ったのも、家庭を築き、仕事に精を出し、人生も順調に歩んでる時、ふと心の中に、「これで良いのかな?何か大事な事を忘れていないかな?成る程と腑に落ちる様な真理を理解できてるのかな?」このように、ふとした疑問がどんどん膨らんできたからです。インド巡礼は、真理を求める巡礼の旅になるはずです。 【その11】

インド巡礼記

カルカッタの駅はホームまで人の出入りが自由で、車で奥の方まで入ってきます。

物売りやポーターなどが乗客に混じって列車の中まで入ってきます。いつ頃降りるんだろうかと思ってみたり、この人は乗客なのか、物売りなのか、分かりません。

普通車には、ポーターが頭の上に乗せて運んできたスーツケースのような荷物を、列車の窓から入れ、席の取り合いの競争しているように見えます。

指定席がない人は、何時間もかかるのに立っている人がたくさんいます。

驚いたのは、これから乗る列車の長いことです。20両以上もあります。私たちの車両はなかなか見当たりません。

入口にタイプで印字された名前が張ってありますが、私たちの名前はありません。まあ、とにかく列車が出てしまうと心配なので、なにかわからないまま乗り込んでいきました。

だんだんと出発の時間が近づき、そして予定の時間が過ぎていきます。列車は、時刻どおりには出発しません。それを詫びるようなアナウンスはありません。そのうち時間がくれば、いつかは列車は走ると、皆さん待っているようです。

そして、いつしか列車は動き始めました。荷物に囲まれ窮屈そうなまま夜汽車は走ります。

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調べてみても、今いる席と予約の車両が違うようで、1つの車両の配置は、贅沢にも4人席部屋が2つに、2人席部屋が1つの合わせて10人分の席で1両が定員になっています。

全員が15名なので、1車両では乗りきれなく、もう1車両の一部にグループが分かれて乗り込んでいるはずです。

日の出ツアーの岡田氏は、どこに自分の席があるのやら、一人スーツを持って部屋から部屋へと、「私の席はどこですか?」とジプシーのように自分の居場所を探しています。

ところが、列車と列車の通行はできないので、駅に止まったときに隣の車両へ移動することになります。

ここはインドですから、立っている人のことを思えば、これだけのスペースをとるのはずいぶん贅沢なことです。

日本で言うと、貨物列車を改造したような状態で、ベッドになる椅子は黒いビニール張りで堅く、寝具は毛布1枚で、下敷きの白いシーツとビニールで覆っている枕です。

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しばらく時間が経ち、皆さんが落ち着いた状態で調べてみると、旅行会社のミスで部屋が1つ足りないことがわかりました。

足りない部屋の人を各部屋に詰め込むことになり、2人部屋に3人となりました。

組み合わせとしては、私と奥山氏、それから松下電器の孫会社を経営する社長こと浅田氏(仮名)の3人で寝ることになりました。

さっそく身の上話を聞いてみると、この浅田氏は昔の華々しい武勇伝とその結果として女性関係が奥さんに知れるところとなり、今は奥さんと別居中とのことでした。

誰がどこに寝るのか、2人部屋に3人ですから、話し合いとなりました。一番若い奥山氏は、自分から床に寝ると言うので、別居中の社長を出入りしやすい下の席に勧め、私は一歩譲り、上の段に寝ました。

上の段なので、少し見通しが利き、夜中に通行する人がカーテン越しに見え隠れしていました。さて、旅の空なので、今夜あたりは奥山氏のところに人目忍んで彼女がひょっとすると来るのかなぁと私のほうが、胸がドキドキ、ワクワクしていました。

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きっと、彼女は別居中のおじさん社長が一人追加になったことを知らないはずです。こっそり入ってきて、床に寝ている奥山氏を踏んでしまったら大変なので、私としては気が気ではありませんでした。

そうこうするうちに、列車はときどき駅に止まり、大きな音がして、急停車します。そのたびに車両は軋み、ベッドは揺れます。

ガイドのアーナンダ氏は列車が止まったときに隣の車両に部屋の確認に行ったきり帰ってきません。日の出ツアーの岡田氏は通路の床にシーツをかぶって寝ることになりました。

寝付かれない夜行列車で、鉄道線路と台車とが激しく揺れ、音も大きく、スピードが出るとこのまま放り出されるような気がして、まるで、遊園地のジェットコースターがカーブを切るときの遠心力と慣性の法則を頭の中では考えながら、不安な思いでいました。

やはり一眠りするために、奥山氏の飲んでいるウイスキーを少しいただきましたが、なかなか列車の音が大きくて眠れません。

列車がスピードを上げて速くなってくると、よく揺れが始まって不安になってきます。とても怖いというのが、実感でした。

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しかし、何年もこんな状態で走っていて、今までたいした脱線事故もないのであれば、きっと、今夜も目的地にはなんとか着くだろうと自分を説得し、眠るようにしました。

途中の駅に列車が止まると、すぐに物売りの人の声が聞こえます。

ウイスキーが回ってきて、そのうちだんだんウトウトと眠くなり、眠ってしまいました。

この時に考えていたことは、日の出ツアーから15名分の列車乗客代をもらい、席を割り当てていましたが、実のところは、コンパートメントである部屋一つ分を節約し、浮いた部屋の代金は現地ツアー会社のアーナンダ氏が、懐に呑んでしまったのではないかという、疑惑を感じていました。そのことは、この後、大きく影響を及ぼしてきます。