神戸商科大学大学院社会大学院:第5回 神戸商科大学社会人大学院「MBAの会」 研究発表会 ~レポート~

大村邦年さんの開会のお話しは、最近ビジネスのために行ったヨーロッパの土産話がありました。7年前、ヨーロッパの有名ブランドは競って日本市場に参入し、自社の日本現地法人を作り、直販を始めました。

ところが、36社中成功事例はわずか7社のみとなり、今は引き揚げにかかっているようです。

この先、過去のビジネスモデルは、わずか7年も経つと陳腐化しかねません。

そこで私たちの神戸商科大学社会人大学院「MBAの会」の会員の皆さんも、知識を常に新しくし、陳腐化を防ぎ、錆落としをしていかなければなりません。

知識もビジネスも早いスピードで変わってくる時代には、遅れてしまいます。というお話しがありました。

上村隆夫氏の発表は、『製造業中小企業の経営と中小企業政策』です。

上村さんの課題は、衰退傾向を続ける日本の製造中小企業とくに機械・金属製品下請け製造業中小企業へのこれからの経営の方向についての提言です。

日本の企業の70%を占める同族会社の中小企業の問題を捉えています。

この中小企業の生き方は、経営者にかかっています。

戦略的経営を示すには、自分の会社がどのようになりたいかを、経営者が分かりやすく利害関係者に示すことが重要です。

しかし、中小企業の多くは戦略経営を明らかに話すことは、手の内を周囲に知らせることでもあり、「秘中の秘」が戦略であることもあります。

たとえば、親会社との関係において、本当の戦略を言えば、親会社も一線を置いて接することになりかねません。

「経営革新」に成功した企業の経営者に共通して見られる特質として、先見性・向上心・起業家精神・リーダーシップが挙げられる。

事業の結果の良し悪しは、基本的に従業員の質に依存するものなので、人材の育成は重要な課題として挙げられる。

優れた企業風土は、事業成功のプラットフォームとなる。優れた企業風土を規定して長期的に醸造していくのが、経営者にとって顕在化しにくい最も重要な課題である。

二番目の報告は、小林正二氏による『我が国製造業の存立性と経営力に関する考察』でした。

小林さんは、長らく大手造船会社に勤務された体験があります。

問題意識として、優れた技術を持つ我が国の製造業が何故衰退するのか、ということです。

日本の造船業の生い立ち、ガーシュンクロン・モデル、ローレンツ曲線などの理論を交えた発表となりました。

成長企業となった企業には、企業者としての明確な経営理念・経営戦略が存在する。

経営力の源泉は、企業者意識にある。言い換えれば、企業者のリーダーシップにある。

このような発表でした。

三番目に、山内義夫氏は『現在日本の鉄道事業の制度会計と運賃制の一考察』について、発表されました。

山内さんの問題意識は、鉄道事業の衰退の時代に、鉄道事業を維持する方策は何か?

具体的な問題意識としては、なぜ国鉄が崩壊したのか?

民営でも人口減少社会で経営は成り立つのか?

現行の運賃制度や会計制度はどうあるべきなのか?

地域住民のために国や地方自治体は何をすべきか?

21世紀の持続可能な経営形態とは何か?など、

多くの問題意識を挙げられました。

現在、日本の鉄道事業者は、212社です。

旅客輸送鉄道事業者は150社で、JR6社、大手民鉄15社、地下鉄事業者9社で、日本の全鉄道営業キロの86%を、輸送人員は96%を占めています。

100円かけていくら儲かるかという収支実績では、大手民営の収支係数は123で、JRは120となっています。

ところが、公営地下鉄と地方中小民鉄では、収支係数は100以下となっていて、採算性の確保が難しくなっています。

とても難しい問題だと思います。

地域の住民には交通機関は日々大切な問題ですが、赤字の場合は誰が負担するのか、公的資金なのか、あるいは住民が我慢するのか、政治的な判断が関わってきます。

小西先生の講評は、三人の発表がとても素晴らしい内容でしたと、お褒めの講評でした。

私たちは21世紀の時代に入っているという認識が必要です。

これまでの大企業経営者は、行政による政府主導型の設備投資を行い、設備を拡大し、景気の変動により過剰設備になった場合は、政府に責任を求める姿勢がありました。

21世紀の経営者は、自らが経営判断を行い、自らの意思決定に対し責任を自らが負うという姿勢が大切です。

このような神戸商科大学社会人大学院「MBAの会」の研究会を通して、広く私たちの専門性と社会性をどんどんメディアにのせて発表していくことが良いことだと思います。

これからも他大学との交流を通した論戦などにも視野に入れると一層の発展が望めるのではないでしょうか。 そのためには、さらなる研鑽も必要ですと、締めくくられました。